仙台市内で整骨院を開業している大坂武史氏(54)は、東北福祉大ゴルフ部のトレーナーとして数々のタイトルに貢献している。同大OBで日本ツアー通算3勝の金谷拓実(24)をサポートして海外メジャーのマスターズにも帯同。ゴルフにおける体づくりの大切さを明かした。(取材・構成=岩崎 敦)
ゴルフがオフになる冬場、大坂氏の活動は“本番”を迎える。12~2月は東北福祉大ゴルフ部員と週4回、約2時間のトレーニングを行う。シーズンに備えて体の土台をつくる大切な作業だ。
「野球部の室内練習場を借りて下半身を鍛えます。体を効率的に使える動き方を教え、筋持久力をアップさせることが目的。1年生は必死にやっていますが、3~4年生になるとマシンでトレーニングをしてから来るなど、意識が変わってきます。こういう指導をしている大学は福祉大だけでしょう。他の大学の生徒さんからうらやましがられることもありますね」
昼間に整骨院で働き夜間は仙台市内の専門学校に通う生活を6年間続け、柔道整復師と鍼灸師の国家資格を取得。29歳で整骨院を開業すると、腰痛の悩みを持つアマチュアゴルファーが多いことを知った。
「インパクト時の衝撃は全てのスポーツの中で最も大きく、世界中のゴルファーの8割に腰痛経験があると聞きました。私も30代後半にゴルフを始めていたので、悩みを解決したいと思うようになりました。真剣にゴルフをマスターして、きちんと応えられるように」
勉強のためセミナーに通い、毎年11月に開催されるダンロップフェニックス(宮崎・フェニックスCC)に帯同するトレーナーと知り合った。チームの一員として、2008年大会で初めてプロゴルファーのケアを行った。
「普段テレビで見る選手ばかりなので、最初は緊張で汗だくでしたね」
15年からは東北福祉大のトレーナーを務め、金谷のほか日本ツアー4勝の比嘉一貴(27)、今月の日本オープンで95年ぶりのアマ優勝を果たした蝉川泰果(21)=東北福祉大4年=らを指導。日本オープンにも帯同して快挙を後押しした。
「金谷も比嘉も毎日最後まで練習をしていました。金谷は当時からプロになるという目標が定まっていて、何でも淡々とこなすタイプ。比嘉は運動能力が高くて、楽しんでやっていました。入学当時の蝉川は線が細かったですが、ここ1~2年で筋肉量が増えてスイングが安定しました。トレーニングに積極的で、シーズン中も週に2~4回ぐらいはジムで鍛えていますよ」
現在は大学の試合に年間6~7試合帯同し、プロツアーにも10試合ほど出向く。スタート前の午前4時ごろからケアを行い、昼間はラウンドに付いて選手の状態をチェック。ホールアウト後もケアがあるため、仕事が終わるのは夜になる。
「なかなかハードですが、いつも選手から刺激をもらっています。歩き方、腕が振れているか、股関節で蹴れているかなど、ラウンドを見れば状態が分かります。不調には原因があるので、それを伝えて改善したい。選手のつらさも喜びも共有したいと思っています」
19年と今年は金谷のサポートでマスターズへ。オーガスタナショナルGCは夢の舞台だった。
「コースはテレビで見るよりも広くて、アップダウンも激しかったです。大会の1週間だけのためにトイレや土産店が作られていて…。あのこだわりは行かないと分からないですね。19年はタイガー(ウッズ)が優勝しましたが、離れていても観客の大歓声で彼がどこにいるか分かりました」
11月には金谷の欧州ツアー予選会(フランス、スペイン)に帯同する。活動の場を広げながらも、整骨院院長としての仕事に誇りを持っている。
「今はプロやトップアマを見ることが多いですが、アマチュアゴルファーの悩みにも応えたいと思っています。痛いときのスイング動画を見せていただければ、体の使い方のアドバイスはできます。ゴルフは生涯スポーツなので、長く楽しめるようなお手伝いができたらいいですね」
◆大坂 武史(おおさか・たけし)1968年6月15日、宮城・気仙沼市生まれ。54歳。赤門鍼灸柔整専門学校の柔道整復師科と鍼灸科を卒業。東北福祉大ゴルフ部トレーナーのほか、日本ゴルフ学会会員、プロスポーツトレーナー協会マスタートレーナー、JGTO公認トレーナーなど。大坂整骨院支倉本院は、仙台市青葉区支倉町4の1高森ビル1階(電話022・723・8883)。