
15番ティーショットを放つ小平智(カメラ・今西 淳)
◆報知新聞社主催 国内男子プロゴルフツアー 今季最終戦メジャー 日本シリーズJTカップ 第3日(3日、東京よみうりCC=7023ヤード、パー70)
小平智(33)=Admiral=は67の11アンダーで首位を守り、4年ぶりの大会2勝目に王手をかけた。
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静かに耐え、好機をものにする。順位が大きく入れ替わったムービングデーに、小平は不動心でスコアをつくった。「アイアンの距離感が合わなくてそこまでチャンスはなかったけど、3日間落ち着いて回れているのは合格点」と冷静に回顧。4年ぶり2度目の優勝へ2打差をつけて首位を守った。
パーを重ねた前半9番、左下エッジからの8メートルの上りをしっかりと打ち切った。バーディートライは真ん中からカップイン。「ロングパットのタッチが合っていて、ストレスなく打てていることが大崩れしない理由」。16番では10メートルを沈め、ギャラリーの拍手に包まれた。
今年に入り、戦うマインドを変えた。以前は「優勝したい」「今日はいくつ伸ばさないと」と、相手を見てプレーしていた。「自分にプレッシャーをかけすぎてイライラしていた」。今は違う。きっかけは米ツアー82勝のタイガー・ウッズだった。YouTubeで見た動画で「一打一打、その場面に集中するんだ」とウッズは言った。自称「タイガーおたく」は学んだ。「自分の最善を尽くして負けるなら悔いはない」という境地に至った。
オフにはプロ野球・オリックスの山本由伸投手と、共通の知人を通じて会食した。メジャー志向を持つ24歳と過ごした時間は有意義だった。「日本一になったし、日本で一番の投手。出会った人がそうやって頑張っている姿を見ると俺も頑張らないとなって思う」。シーズン中も試合結果をチェック。優勝時には「おめでとう」「ありがとうございます」とメッセージを送り合った。自身も日本シリーズ制覇へ続く。
今大会は特別な思いを抱き戦っている。元レッスンプロでゴルフを始めたきっかけでもある父・健一さんが肺を患い、入退院を繰り返している。4日朝の体調次第で来場する予定だ。「おやじに優勝を見せてあげたい気持ちが強い」。最善を尽くした先に、歓喜の瞬間は訪れる。(高木 恵)