◆女子プロゴルフツアー メジャー初戦 ワールドレディスサロンパスカップ 最終日(7日、茨城GC西C=6780ヤード、パー72、報知新聞社後援)
2打差の首位で出た吉田優利(23)=エプソン=が3バーディー、4ボギーの73と持ち味の粘りを発揮し、通算1オーバーでメジャー初優勝を飾った。21年9月のゴルフ5レディス以来、1年8か月ぶりのツアー3勝目。悪天候の影響でスタート時間が繰り上がり、2ウェーになった異例の大会で豪雨と寒さ、難しいコースセッティングに耐え、昨季2位5回の悔しさを晴らした。申ジエ(韓国)が3打差の2位。
18番で2メートル強のパーパットを沈めた吉田は左手を突き上げ、満面の笑みだ。大雨が降る空とは対照的に涙はない。「3勝目まで長かった分、特別な試合で勝つことができた。今までやってきたことは間違っていなかった」。10位ですら通算10オーバーという中、通算1オーバー。タフなメジャーで頂点をつかみ胸を張った。
気持ちで乗り切った。気温は13度と下がり、体感温度は約3度。また、さらなる天候悪化が予想されたため、早朝から1番、10番と二手に分かれてスタートする「2ウェー」となる慣れない状況。強い雨風に打たれながら我慢強く回った。1番で4メートルのバーディーも、6、9、10番とボギー。14番でスコアを落とし、18年覇者で前の組を回る元世界1位・申に1打差に詰め寄られた。「緊張して、胸が高鳴った」。17番パー5で第3打を1・5メートルに運び、勝利に近づくバーディー。「うまく耐えられた一日」と納得の表情を浮かべた。
プロ生活の原点には、王貞治氏(82)=現ソフトバンク球団会長兼特別チームアドバイザー=から授かった金言がある。プロテストに合格した19年のオフ、辻村明志(はるゆき)コーチ(47)らと王氏と会食する機会に恵まれた。当初、20年春(コロナの影響で開幕は同年6月)からツアー生活を控えた吉田は「プロとしての心構え」を尋ねたという。
「厳しいプロの世界はアマチュアの世界とは全く別もの。(これから)プロ生活が始まるという意識ではなく、普段からプロとして(自覚を持って)行動することが大事だ」。吉田は感激しながら王氏の言葉に聞き入っていたという。覚悟がさらに強くなった。
深いラフ、高速グリーンなどに加え、最終日は大雨。数々の苦境を乗り越えた。7月には全米女子オープン(6日開幕、米カリフォルニア州)に日本のメジャー覇者として出場。「本当に楽しみ」と目を輝かせた。
2000年度生まれの「ミレニアム世代」では、21年大会を制した西村優菜(22)に続く2人目の国内メジャー優勝。年間女王を争うメルセデス・ランクでも3位に浮上した。昨年は山下美夢有(21)がこの大会から頂点へ上り詰めた。「今の良い状態を続けることが女王につながると思う」。年間3勝の目標も掲げた。「世界の王」の言葉を胸に刻み、強い吉田優利を見せ続ける。(岩原 正幸)
◆吉田優利あらかると
▽生まれ 2000年4月17日、千葉・市川市。23歳
▽サイズ 158センチ、58キロ
▽ゴルフ歴 10歳から父・英隆さんの影響で始める。16年後期からアマチュアのナショナルチーム入り。19年のプロテストに一発合格。得意クラブはドライバーで平均飛距離は約240ヤード。プレーの身上は「粘り」
▽主な実績 12年に関東小学生ゴルフ優勝。千葉・麗沢高3年時の18年に日本女子アマ、日本ジュニア優勝。アマチュアの19年にワールドレディスサロンパスカップ4位、全米女子オープン出場
▽ツアー3勝 21年楽天スーパーレディース、ゴルフ5レディス、23年ワールドレディスサロンパスカップで優勝
▽オシャレ番長 昨夏の資生堂レディス前夜祭では、美容のプロからヘアメイクを施され、「化粧するのも自分磨きの一つ。テンションが上がる」。
▽SNS発信 私服姿を積極的にアップするなど「美」への意識が高い
▽好物 イチゴ
▽好きな色 青と白。「さわやかな感じのイメージが好き」
▽趣味 お菓子作り。生キャラメルやシュークリームを作ったことも
▽名前の由来 優しくて、有利に生きていけるように
▽家族 両親と弟、妹
◆通算オーバーパーでの優勝 日本女子プロゴルフ協会によれば、1988年のツアー制度施行後に優勝者が通算オーバーパーだったのは、鈴木愛が1オーバーで制した16年9月の日本女子プロ選手権(北海道登別CC、パー72)以来で、今大会が48例目。