J.スピース、メジャー2連勝! ダブルボギーからの“メンタルリカバリー術”を学ぶ


 ミスが許されない緊張状態でのプレーにおいて、ミスした直後のリカバリーの成否が、結果を大きく分けることがあります。

 全米オープン最終日、J.スピースは17番でダブルボギー。それでもスピースは18番(パー5)で、2オンに成功し、堅実にバーディを奪って5アンダーとし、「マスターズ」に続いてメジャー2連勝を果たしました。

 J.スピースのダブルボギーからのゲーム展開は、皆さんにとっても必ず参考になると思います。

 

■大たたきからのメンタルリカバリー

「ミスは気にしない、目の前の一打に集中すべきだ」誰もが、このように考えています。
だが、実際は、プロでもそれが出来る人もいればできない人もいますし、出来る時と出来ない時も存在します。

では、リカバリーにはどういったケースがあるのでしょうか?分類したいと思います。

(1)技術レベルの高低 < (2)メンタルレベルの強弱 < (3)リカバリーできる人 < (4)できる時、できない時 

実際、アベレージゴルファーならどの程度が予想されるのか、簡単にご紹介いたします。

1.技術レベルが高いとは?
 A.毎回同じことができる(例えばフェードボール、同じ打ち方が毎回できる)
 B.リズムが一定である(構えてから打つまでが、毎回同じリズムである)
 C.苦手クラブがない(パターから1Wまで、普通に打てる)

2.メンタルレベルの強さとは?
 D.集中力(ターゲットへの集中と、ボールを打つためのスイング全体への集中)
 E.決断力(風や芝の抵抗や距離の情報分析、クラブ選択やエネルギー量を即決)
 F.忍耐力(好転するまでダメージ最小限に抑え、決してゲームを投げ出さない)

3.リカバリーできる人とは?
 G.受け入れられる(結果の良し悪しに関わらず、受け入れ、忘れることができる)
 H.心静か(ミスからの苛立ちや焦り、逃避等の心理的状態をコントロール)
 I.結果よりプロセスに忠実(今やるべきことに全力で注力することができる)

4.できる時
 J.俯瞰して見ることができる(自分のプレー内容だけでなく、競合のスコアを冷静に見ることができ、積極的マインドが維持できている)
 K.自分を信じている(目標を達成できると強く願っているし、周囲の期待に応えたいと思うし、応えられると信じている)
 L.技術面、メンタル面をコントロール下においている(ミスを受けいれ、ミスを忘れ、揺らいだ技術への信頼を直ぐに立て直す。その強さを用いて、高いパフォーマンスを引き出すことができる)

 次に、簡単にできるメンタルリカバリー術をご紹介いたします。

1.「仕方ないと思う/ミスをクラブや他人のせいにする」
 ゲームが動いている最中に、ミスの原因に集中しても、懸命な対応とは言えません。ミスは他に置いておき、感情が引っ張られないようにします。
 優秀なプレーヤーは、プレー中、ミスした場合でも表情があまり変わりません。
 これは、結果と感情を切り離していると言えます。最初からダメージが受けにくい状態を作ることができるとしたら、たとえミスをしても、影響を受けずにいられます。
 プレーが始まる前に行う完全なるマインドセットが実現できたら、素晴らしいでしょう。

2.「欲望を前面に出す」
 “頑張れ、負けるな、あと少しだ”との言葉は、限界点で戦っているプレーヤーの耳には届きませんし、決して響きません。大切なのは心の底から湧き出る衝動であり欲望です。“勝ちたいのか、No.1になりたいのか”。
 リカバリーとは、ミスの恐怖に打ち勝ち、高い集中力を出すことであるとするならば、強い欲望を前面に出すことにより、もう一度最高の状態(ゾーンの扉)を開くことが出来ます。

3.マインドセット「大たたきした状況からのスタートを設定し、その後のプレーを展開してみる」
 1番ホールをスタートする前に、すでに3ホールで6オーバーしていると仮定します。焦りや苛立ち、落胆、逃避、あらゆる衝動が頭をぐるぐるとめぐります。
 その中で、冷静さや積極的マインドを保ちプレーできるかを試していきます。

4.「好きな食べ物、言葉や音楽、勇気がでる状態を確認しておく」
 高い目標を掲げ、結果を出そうと強く思う競技者は孤独です。世界中の全ての人は異論を唱えても、自らの道を進むことができるくらいの強いマインドが求められます。
 目標達成する過程では、ミスを最小限に思いはするが、致命的なミスをしてしまう場合があります。そのような時に重要なのが、“素の自分に戻れる状態”です。
 大好物を食べている姿を想像するだけで、苛立ちや落胆を忘れることができるそのような状態が、リカバリーを早め、勝利への強い原動力となります。

 

 今回の内容はいかがでしたでしょうか?
人には人の良さがあります。強さはもろさに変わり、やさしさや寛大さは時に攻撃性を強めます。

 

 例えば一番自信のあるパッテイングでのミスが発生した場合、それを立て直すには、時間がかかるかもしれません。ステディーなプレーが信条である場合、ミスにより秘めていた攻撃性を増す場合があります。
 だからこそ、ゴルフは面白いと言えます。
 皆さんのゴルフに参考になる点がありましたら幸いです。
 また次回、お会いしましょう!

 

kogure

◆小暮博則(こぐれ・ひろのり)
1972年11月27日生まれ。埼玉県出身。明治大学商学部商学科卒業。JGTO(日本ゴルフツアー機構)プロ。PGAティーチングプロ。2003年 JGTO ファイナルQT進出。2013年から東京慈恵会医科大学ゴルフ部コーチに就任している。就任後、同大学は2013年度全日本医科大学ゴルフ連盟秋季大会個人優勝、2014年度全日本医科大学ゴルフ連盟春季大会団体優勝を果たす。PFGA(パーフェクトゴルフアカデミー)のゴルフスクールを主宰し、赤坂(東京都)と小手指(埼玉県)にて展開している。 著書に『一生ブレないスイング理論 “左重心スイング理論”でゴルフの常識が変わる』(カンゼン)がある。

PFGA(パーフェクトゴルフアカデミー)ゴルフスクール
http://pfga.co.jp/

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