
開幕戦連覇を果たし、笑顔でギャラリーに手を振る岩井千怜(カメラ・今西 淳)
◆女子プロゴルフツアー開幕戦 ダイキンオーキッドレディス 最終日(9日、沖縄・琉球GC=6610ヤード、パー72)
昨年大会覇者の岩井千怜(ちさと、22)=ホンダ=が逆転で開幕戦連覇を果たした。1打差2位から出て7バーディー、1ボギーと今大会ベストの66をマーク。2位に4打差をつけた。本来出場予定だった米ツアー、ブルーベイLPGAがエントリーミスで欠場となり、挑んだ大会で通算8勝目。1988年のツアー制施行後、2016年のテレサ・ルー(台湾)以来、日本人では初の開幕戦連覇となった。
ウィニングパットを決めると、岩井千はギャラリーの拍手や祝福の指笛に手を振って応えた。「たくさんの声援を聞けてうれしい。一打一打、集中して連覇できたのでうれしい」。日本人では初、貫禄の大会2連覇にガッツポーズを作った。
1打を追う12番で2・5メートルのチャンスを決めてトップの菅に並ぶと、13番をボギーとした菅の後退で単独首位に立った。14番で3メートルのバーディーパットを沈めて差を広げ、実測201ヤードの16番(パー3)では5アイアンでピンそば30センチにつけるスーパーショット。観客をどよめかせ「(勝利を)確信した」という会心の一打で突き放した。
1打差2位に後退した11番パー5で焦りが出た。3ウッドで2オンを狙うか迷い、5アイアンで距離を刻むことを選択。しかし結果はパー。菅が首位に立ち、悔しさが出た。その時だった。今季からキャディーを組むマーク・ウォリントンさん(50)が「Stay calm(落ち着いて)」と声をかけた。焦りが出た時の“魔法の合言葉”だった。岩井千は「自分のマインドをキープしてくれた」と12番につながり感謝した。
本来は国内開幕戦ではなく主戦場にする米ツアーのブルーベイLPGAに出ているはずだった。マネジメント会社のエントリー期限の確認ミスで欠場に。当然、落ち込んだ。「どういうマインドでいこうか…」。ともに欠場となった双子の姉・明愛(あきえ)と「頑張ろう」と切り替えた。前日8日には欠場した米ツアーで竹田麗央が首位に立っていることを耳にし、「悔しい」と心が動いた。「けど、この大会に集中した」
通算8勝目。逆転Vは2度目だ。「今までの優勝とは違った感覚。新しい経験をしている」と大きな収穫を得た。米ツアー本格参戦1年目の今季は「シードを取りたいし、アメリカでも優勝したい。でも優勝してもゴールじゃない。もっと上にいきたい」と向上心は尽きない。2週後のVポイント×SMBCレディス(21~23日・千葉)にも姉妹で出場する。再び日本のファンに実力を見せつける。(富張 萌黄)
◆岩井 千怜(いわい・ちさと)2002年7月5日、埼玉・比企郡出身。22歳。埼玉栄高を経て、武蔵丘短大在学中の21年6月のプロテストに一発合格。22年にツアー史上3人目の初優勝から2週連続Vを達成。23年2勝、24年3勝。今季から姉・明愛(同6勝)とともに米ツアー本格参戦。162センチ、59キロ。家族は両親と姉、弟。
“ささやき”新相棒は米11勝レキシー・トンプソンも担当
千怜のバッグを担いだウォリントンさんは英マンチェスター出身。かつて米ツアー11勝のレキシー・トンプソン(米国)らを担当した大ベテランの50歳キャディーは、今季「チーム岩井」に加わった。昨年4月のメジャー、シェブロン選手権で明愛を一目見て「アメリカに来るなら担ぎたい」と声をかけたのがきっかけ。2週前の米ツアー、ホンダLPGAでは姉のキャディーについて2位に。今週は妹で優勝と早くも結果を残している。
ウォリントンさんの言う千怜のストロングポイントは「自分のプレーにフォーカスできる」という精神面。姉妹で「絶対にアメリカで勝てる。メジャーもね」と描く。2週後は明愛を担当する。(萌)