
好発進を決めた谷口徹(カメラ・高木 恵)
◆男子プロゴルフツアー 中日クラウンズ 第1日(1日、愛知・名古屋GC和合C=6557ヤード、パー70)
ツアー通算20勝で57歳の谷口徹(フリー)が1イーグル、3バーディー、2ボギー、1ダブルボギーの69で回り、トップと2打差の6位につけた。「必死やけどね。もう必死で必死で必死やった。アンダーパーで帰ってこられてよかった」。ホールアウト後にサングラスを外した谷口の表情に、疲労の色がにじんだ。
前半11番パー4で残り93ヤードの第2打を52度のウェッジでカップに放り込みイーグルを奪い、波に乗った。後半2番のバーディーで4アンダーの単独首位に浮上。「居心地悪かった。守らなきゃいけない、落としたくないなって」。想定外の好位置に、複雑な感情が沸いた。直後の3番、4番で連続ボギーをたたき、5番では右ラフからの第2打が木に当たり、ダブルボギーを喫したところで吹っ切れた。
「当たった瞬間完璧だと思ったら木に当たっていた」と首をかしげた一打を引きずらなかった。「ダボを打って貯金がなくなったから気楽になった。またゼロから頑張ろうかなってフラットになった。そこから、あれ、調子いいやんって思って吹っ切れた」。3ホールで4つスコアを落としても心は折れない。6番で6メートルのバーディーパットをねじ込み、よみがえった。
ツアーの最年長優勝記録は尾崎将司の55歳241日(2002年全日空オープン)。記録更新の可能性について話が及ぶと「そんなことよく考えますね」と目をパチクリ。「阪神の佐藤くんが56本ペースや!って書いている記者おったけど。それと変わらんこと言いますね」と笑いを誘った。「一日ぐらいやったらみんな誰でもいいスコアで回れる。4日間でじゃないと、いいゴルフをしたとは言えないんでね」
2018年の日本プロ選手権優勝で得た複数年シードは昨季まで。賞金ランク65位以内に入れずシード落ちした今季も、レギュラーツアーで戦うことを選んだ。「生涯獲得賞金25位以内」の資格を行使して出場している。オフからトレーニングの種類を増やした。「今年は体のコンディションやバランスがいい。クラブも振れている」。57歳の今も全身のトレーニングを毎日欠かさない。「意外とまじめです」とはにかんだ。
風が上空を舞い、グリーンは硬さを増し、難しいコンディションの一日に。104人中アンダーパーは11人だった。「風が吹くと難しい。リカバリーが当然必要になってくる。バンカーとか好きなんでね。手前のピン位置が多かったし、風の向きも難しかった。こういうコンディションのときは風のジャッジとかも含めて、必要なことが増えてくる」。経験値をフル稼働させた。
2002、07年と2度賞金王に輝いた。今季は毎試合「最後かもしれない」と思って臨んでいる。開幕戦の東建ホームメイトカップでコース近くのうなぎ屋に初めて行った。「一回も行ったことがなかったから。最後かもしれんし、一回くらい行っとこうと思って」としんみり語り出したのもつかの間。「鍋谷(太一)くんに会って、おごらされるはめになりましたよ。行くんやなかったーって思って。すごく高くつきましたわ」とまた爆笑を生んだ。
若い選手に食らいつきながら、プロ34年目の今季も戦っている。「みんなうまいし、勝つのは難しい。やる気もあるし、元気だし、回復力もあるし。寝たらすぐに元気。こっちはもうヘロヘロ」と正直な思いを明かしつつ、言った。「でも同じフィールドでやるから、やっぱり負けたくないっていうかね、勝たないといけないんで。そういうのはちょっと考えながら、自分なりにやっている」。勝負師の魂は捨てていない。