◆男子プロゴルフツアー パナソニックオープン最終日（２３日、千葉・千葉ＣＣ梅郷Ｃ）
６打差２０位スタートの久保谷健一（４５）＝フリー＝が７バーディー、ボギーなしでこの日のベストスコア６４をマーク。通算１１アンダーで並んだ宮本勝昌（４４）＝ハートンホテル＝とのプレーオフを１ホール目で制し、１２年１０月の日本オープン以来の通算７勝目を挙げた。
“神パット”で１９７３年ツアー制施行後初の日本勢開幕４連敗を阻止。日本シリーズＪＴカップ（１１月３０日開幕・東京よみうりＣＣ）での史上最年長での日本タイトル３冠獲得を今季の目標に掲げた。
プロ２３年目のベテランが神パットを連発して、驚きの大逆転劇を演じ切った。プレーオフ（ＰＯ）１ホール目。久保谷は優勝を決める３０センチのボギーパットを沈め、喝采を浴びると苦笑い。「相手が崩れて勝つのはあまり喜べない。今日はボードを見ずにベスト１０に入れるかも、とやっていたんですよ」。ホールアウト後１時間以上経過してのＰＯを制すと「帰らなくてよかったですねぇ」と、優勝会見場の第一声でおどけた。
グリーン上で輝いた。前半９パットなどこの日最少の計２３パット。「人生で３本の指に入るくらい良かった。ショットが悪くても我慢したご褒美かな」。１番で４メートルを沈めて勢いに乗った。５番は６メートル、７番と９番は８メートルを沈めて伸ばした。１１番は１５メートルを放り込み、１８番は「寄せにいったら入った」と、下り４メートルのフックラインを読み切った。
崖っぷちだった。１４年６月に椎間板ヘルニアの手術を受けた。以降３年連続で賞金シードを逃した。「腰痛で朝起きるのも大変。ゴルフをやめようと思ったこともある」。ゴルフ界屈指の大酒飲みも「年とともに翌日がつらくて…。ゴルフにも酒にも裏切られた」。そんな中、１年ほど前から飼った愛犬が「心の支え」に。ペキニーズのアズキちゃん（メス）とキントキくん（オス）。スマホに保存した写真を会見場で報道陣に見せ「かわいいでしょ？ こんな美人はそうはいないよ」と溺愛ぶりを披露した。
今季は日本オープン優勝で得た５年シードの最終年。酒を控えて戦いに備え、開幕４戦目でさらに２年のシードを獲得。「とりあえず一安心。今夜は浴びるように飲みたい」。球を見ずにカップだけを見て打つパット練習を昨年から導入し「狙えるパットに近づいてきた」と成果も実った。次の目標は日本シリーズ制覇。「もし勝てたらゴルフをやめてもいいかな」―。苦しみ抜いた４５歳が新境地を切り開く。（榎本 友一）
◆久保谷 健一（くぼや・けんいち）１９７２年３月１１日、神奈川・秦野市生まれ。４５歳。実家が練習場を経営していた関係で１０歳でゴルフを始め、明大時代の９０年に全日本パブリック優勝。９５年に３度目の挑戦でプロ合格し、９７年フジサンケイクラシックで初優勝。０２年日本プロ、１２年日本オープンなど計７勝。賞金ランクは０２、０９年の７位が最高。１７４センチ、７０キロ。家族は妻と１男１女。