ゴルフの日本、タイの親善大会・第1回アマタフレンドシップカップが21日から3日間、タイ・アマタスプリングスCCで行われた。男女ペアなど変則のマッチプレー形式(最終日のみシングルス)で争い、通算32勝の尾崎直道(62)、2008年賞金女王の古閑美保さん(36)の両キャプテン率いる日本は13ポイント対15ポイントで惜敗した。
連日、気温33度以上の猛暑の中、小平智(29)=Admiral=、谷原秀人(40)=国際スポーツ振興協会=を中心とした日本チーム(プロ10人、アマ2人で構成)は素晴らしいチームワークを見せた。最終日に全員が登壇した会見では誰もが真っ先にチームのことに触れ、個人スポーツであるゴルフで団体戦の面白さを垣間見た。
今回、1998年度生まれの「黄金世代」からは畑岡奈紗(19)=森ビル=、小祝さくら(20)=ニトリ=、原英莉花=(19)=フリー=の3人が参戦。2学年下で2000年生まれの「ミレニアム世代」からはアマチュア日本代表の吉田優利(18)=麗沢高3年=が出場した。
今年米ツアー2勝で、賞金ランク5位と飛躍した畑岡は来季のメジャー制覇を見据え、今大会でアイアンをすべて入れ替えた。「実戦で距離感を合わせていきたい」と、スリクソンZ785をテストした。ラウンド後には日没間際までショット練習で汗を流した。スポットでコンビを組んだ、15、16年賞金女王のイ・ボミ(韓国)の元専属キャディー・清水重憲さんに約80ヤード先に立ってもらい「今のは何ヤード!」といった具合に、納得いくまで微調整を行っていた。
最終日(23日)のシングルスでは、世界ランク1位で今季賞金女王のアリヤ・ジュタヌガーン(23)を3アンド1で撃破した。「国のエースのような存在が当たるのは分かっていた」。互いのプライドがぶつかった年内最後のラウンドを勝利で締めくくった。
同世代で国内組の2人は明暗が分かれた。プライベートを含めて初の海外という原は「攻めていけるコースは私に向いている」との言葉通り、4戦4勝と波に乗った。一方「食事と高麗グリーンが合わなかった」と肩を落とした今季賞金ランク8位の小祝は4戦全敗で悔し涙を流した。それでも「高麗を克服できればプレースタイルも広がる」と、課題を見つめて前を向いた。
今夏、日本女子アマと日本ジュニアの2冠に輝いた吉田は初日と2日目を小平、谷原に引っ張られ、1勝1分けでポイントを稼いだ。小平からは「すぐに(プロで)活躍できるよ」と絶賛され、練習ラウンドをともにした谷原からはアプローチで「体の軸がブレないように」と助言を受けた。シングルスでは「これまでグリーンのラインを読んでもらっていたので、自分でやるとなかなか難しかった」と、タイの天才少女アタヤ・ティティクル(15)に惜敗した。だが「この一週間は他の人にはできない経験なので、今後に生かしたい」と大きな収穫を持ち帰った。
長年、上田桃子(32)を指導し、小祝と吉田のコーチでもある辻村明志(はるゆき)氏(43)は2つの世代を次のように分析する。まずは黄金世代について「(勝みなみ、新垣比菜、大里桃子の)3人がツアーで優勝して、シードも5人(上記3人と小祝、原)が取った。プロでの1年間の経験値というのは、ものすごく大きい」と語った。
ミレニアム世代には「最初は(黄金世代と実力は)少しの差かもしれないが、プロの2年先というのはなかなか追いつくものではない。実績が“2回り”も違ってくる。だから(最短でプロ入りする2020年の)1年目が大事」という。その上で、高3世代へのメッセージとして「うまさは付いてくるもの。まずは1年間戦える頑丈な体を作ること。調子を崩してスランプになる人は体の疲れが出ている。タフでないとプロでは生きていけない」と続けた。
未来ある両世代の選手たちは世界を見て、来年も鍛錬を続ける。彼女たちの奮闘を紙面を通して伝えていきたい。(記者コラム・岩原 正幸)