「すごいことやっちゃったな」“二人三脚”青木コーチが明かす渋野全英Vへの道のり


 ◆米女子プロゴルフツアーメジャー第5戦AIG全英女子オープン最終日(4日、ウォバーンGC=6756ヤード、パー72)

 2打差の単独首位から出た渋野日向子(20)=RSK山陽放送=が7バーディー、1ボギー、1ダブルボギーの68で回り、通算18アンダーで優勝した。2017年秋から渋野日向子を指導する青木翔コーチ(36)は今回キャディーとして、最も近くで優勝を支えた。2年前のプロテスト不合格で失意のどん底にいた渋野にゴルフを基礎から教え込み、昨秋から「3年以内に国内ツアー優勝」の計画を掲げた。予想を大きく上回る快進撃に「すごいことやっちゃった」と舌を巻いた。師匠がスポーツ報知に手記を寄せ、成長の軌跡、ラウンド中の舞台裏を明かした。(取材・構成 岩原正幸)

 率直な感想は、すごいことやっちゃったなというのが一番です。10番を終わってスコアボードを見て、本人も「行くしかない。ピンしか狙わない」という感じでした。初日に良かったせいか、後半の方がバーディーを取れる予感がありました。

 終盤にテレビカメラを前に駄菓子を食べていた場面が話題になっているけど、あれは純粋に遊んでいたんです。「せっかく撮ってくれているんだから食べてこいよ」と僕が言ったら乗り気でやってくれた。18番はバーディーを取るしかない状況。第2打地点で「プレーオフしたくない」と言ってきたので「決めるしかないんだから格好良く決めろ」って言ったんです。最後のスライスラインのバーディーパットは「行け!」という感じで打ったら入った。外れていたら3パット確定くらいの強さ。「やった。終わった」という気持ちで涙は出なかった。帰国したらどんな状況なのか、想像すると怖いですね(笑い)。

 指導を始めたのは17年秋。同じ用具メーカーのピンゴルフで彼女がモニター選手、僕が同社の契約コーチだった縁で、当時のアマチュア担当から「プロテストに落ちて渋ちゃん(のゴルフ)がやばいことになっているから見てほしい」と紹介されました。1回目のプロテストは散々でした(※14オーバー97位で最終日に進めず)。当時はボールに対するコンタクトがものすごく下手だった。クラブのヘッドはボールに対してこう当たるんだよというところから教えました。僕が手で、頭を押さえた状態で打つ練習を何度もした。それまでは(上体が)起き上がって打っていた。頭の位置が後ろに行かないように、体に教えていった。

 それでも去年の秋、下部ツアーで調子が悪く、いろいろ(技術系の)ドリルをやっても結果が出なかった。ショット時に効率よく球に力が伝わるよう体の動きを覚えさせるトレーニングを取り入れると、そこから急激に良くなった。今季に向けては「球を上げるアプローチができるように」と、技術面でそれくらい。あとは、骨格や筋肉がしっかり動くように取り組んだ。当初は「体づくりをして、3年後にレギュラーツアー初優勝を目指そう」と考えていた。僕が思っていたより、彼女の秘めている潜在能力が高かったということ。

 取り組む姿勢も素直です。やれと言ったことは絶対にやる。自分で考えるし、分からないことは分からないと言う。今は聞かれない限り、僕も何も言わない。それが本来のアスリートのあるべき姿。五輪のチャンスも出てきて、やっぱり出てほしい。出たら一緒にメダルを狙いたいです。

 ◆青木 翔(あおき・しょう)1983年3月28日、福岡県生まれ。36歳。2011年にジュニア、プロゴルファーの育成開始。12年、自身のゴルフアカデミー(兵庫)を設立。渋野のキャディーを務めるのは昨年6月の試合以来。主な指導実績は男子の亀代順哉(24)、女子の大出瑞月(21)。

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