◆米男子プロゴルフツアー 第120回全米オープン最終日(20日、米ニューヨーク州ウィングドフットGC)
今年、話題を集めた「ゴルフ科学者」が異次元の強さで、待望のメジャータイトルをつかんだ。デシャンボーはこの日唯一の60台。6度目の全米オープン開催となった難コースで、全4日間オーバーパーのない史上初の選手となった。6打差の圧勝に、大学で物理学を専攻した理論派の27歳は、「自分は競技の常識を変えていると思う。人に影響を与えられたらいい」と、誇らしげに分厚い胸を張った。
豪快なスイングで難コースを攻略した。4番のバーディーで首位に並び、圧巻は9番パー5だ。1打目を375ヤードも飛ばし、12メートルのラインを読んでイーグルを奪った。圧倒的なパワーでこれまでの常識を打破した。ラフが深く、グリーンの硬い全米オープンではフェアウェーキープが大事とされてきた。だが、今大会パー3を除く56ホール中、フェアウェーキープは23ホールのみ。記録の残る1981年以降、優勝者では最少。反対に、4日間平均飛距離325・6ヤードは歴代優勝者の中で最長。深いラフからでも、太い腕を豪快に振ってグリーンをとらえた。
コロナ禍でのツアー中断中は1日6000キロカロリーを摂取して肉体改造に尽力し、平均飛距離は20ヤード伸びてツアー1位に。全米アマと全米学生選手権、今大会を制したのはジャック・ニクラウス、タイガー・ウッズに続く3人目。独自の理論でレジェンドの背中を追う。
◆ブライソン・デシャンボー 1993年9月16日、米カリフォルニア州生まれ。27歳。15年に南メソジスト大で、史上5人目となる全米アマチュア選手権と全米学生選手権の同一年制覇。16年にプロに転向し、翌年の米ツアー初優勝から毎シーズン勝利し、通算7勝。昨季賞金ランク6位。アイアンの長さを全て37・5インチにそろえるなど、独特のゴルフ理論で知られる。185センチ、106キロ。