◆女子プロゴルフツアー KKT杯バンテリンレディス 最終日(18日、熊本空港CC=6501ヤード、パー72)
2打差4位から出たルーキーの山下美夢有(みゆう、19)=加賀電子=が7バーディー、1ボギーでこの日ベスト&ツアー自己最少タイの66で回り、大会記録を更新する通算14アンダーで逆転した。ツアー初優勝で5打差の圧勝。2001年度生まれ「21世紀世代」では、昨年2勝の笹生優花に続く2人目の優勝者となった。小祝さくら(23)=ニトリ=、古江彩佳(20)=富士通=が2位。
マスターズと同色の緑のジャケットに袖を通した山下は、悲願の初優勝に涙ぐんだ。2番で4メートルのバーディーで単独首位に立つと、9番のバーディーで後続と3打差に。小祝、古江に5打差をつけ、大会新の14アンダーでゴールテープを切った。
「たくさんの方々に支えられてここまで来た。本当にうれしくて泣いてしまった」。果敢にピンを攻め、強風の中で全体1位のパーオン率78%。「ショットが安定してリズムよくできた」。3日目まで首位で最終日に逆転負けした2週前(2位)の悔しさを晴らし、早くも今年の目標だった「初優勝」をかなえた。
01年度生まれ「21世紀世代」では昨年6月の開幕から笹生、西郷真央(19)が活躍した。山下は3戦連続予選落ちと振るわなかったが、焦らず努力した。転機は昨夏、男子ツアー48勝の中嶋常幸(66)が主催する若手女子の試合「竹取物語」(栃木・東松苑GC)への参加で、レジェンドから教えを受けた。オフも師匠の元を訪れ、「アプローチや精神面が変わった」と全体的にレベルを引き上げてくれた。
同世代では笹生に続く2人目の優勝者となり、「19歳で初優勝までは考えなかった」。身長150センチは西村優菜(20)と並び、今季ツアーメンバー中、最も低い。通算3勝の馬場ゆかり(38)の149センチに次ぐ史上2番目の低身長Vにもなった。「マイナスには考えずに、飛距離であったり、いろいろやることがある」と、コツコツと腕を磨いた。
19年11月のプロテスト合格から、スーパーカー好きを公言し「フェラーリに乗りたい」と語る。「何回も勝って、乗れたらいいかな」。晴れやかな表情で大きな夢を掲げた。(岩原 正幸)
中嶋常幸(山下について)「身長はないが、非常にバランスがとれて、いいスイングをする。教えたことを生かすのは本人次第。しっかりとものにできている」
◆山下の優勝用具 ▽1W=スリクソンZX7(ロフト角9.5度、硬さSR)▽3、5W=スリクソンZX▽4UT(22度)、5UT(25度)=スリクソンツアーZX▽6~9I、PW=スリクソンZX5▽48、52、58度ウェッジ=クリーブランドRTX▽パター=スコッティ・キャメロン▽ボール=スリクソンZスターXV(パター以外は住友ゴム工業社製)
■「思っていたよりも早い」父も喜び
〇…山下の父・勝臣(まさおみ)さん(46)が電話取材に応じ、「ホンマにうれしいですわ。(初優勝は)思っていたより早かった」と喜んだ。昔から熱心に走り込んでいたといい「下半身は強くしっかりしている」と分析。オフの過ごし方についても「12月、1月はずっと筋トレ。ロープで腕力を鍛えたり、25リットルの水の入ったポリタンクを使ってバランス感覚を養いました」と明かした。
◆山下 美夢有(やました・みゆう)2001年8月2日、大阪・寝屋川市生まれ。19歳。5歳から父の影響でゴルフを始める。17年全国高校選手権関西大会優勝、19年関西女子アマ優勝、トヨタジュニアW杯では団体戦制覇。ドライバーの平均飛距離は240ヤード。150センチ、54キロ。家族は両親、弟、妹。