埼玉・霞ケ関CC(7477ヤード、パー71)で今月1日に行われ、NHK総合で生中継された東京五輪男子ゴルフ最終日(午後3時5分~4時56分)の世帯平均視聴率は2日、20・7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と発表された。マスターズ王者の松山英樹(29)=LEXUS=の激闘がもたらしたこの数字は、国内男女ゴルフ中継では歴代最高のテレビ視聴率だった。
通算15アンダーで並んだ、超異例の7人での「銅メダルプレーオフ」。松山は1ホール目でパーをセーブできずに惜しくも4位となった。7月初めの新型コロナウイルス感染からの復帰戦でも、プロ意識の塊は言い訳は一切しなかった。4月のマスターズで、日本男子初のメジャー制覇の歴史的大偉業からのがい旋試合について「結果が全てなので、メダルを取れなかった以上は評価は無い」と厳しく総括した。
今回の五輪は無観客開催で、実際の世の中の盛り上がりをはかるのは難しい。とはいえ、通常の国内ツアー最終日が行われる時間帯にテレビ視聴率は20・7%をマーク。瞬間最高視聴率は23・9%に上ったという。複数の民放テレビ局関係者に聞くと「あくまでも計算上の数字ですが、20・7%だと約2800万人が見ていたことにはなりますね。ゴルフ中継では本当にものすごい数字ですよ」と教えてくれた。
新型コロナ感染者の急激な拡大が止まらない日本。東京都の小池百合子知事(69)も「ステイホームに一役買っている」と、東京五輪で高視聴率をマークした競技関係者に対して、感謝の言葉を述べている。
男子ゴルフ中継のこれまでの最高平均視聴率は中嶋常幸が9位、青木功が14位、尾崎将司が17位となった1987年6月の全米オープン最終日の18・6%(NHK)だった。女子ゴルフの最高は岡本綾子が優勝争いした1987年10月の日本女子ツアー、宝インビテーショナル最終日の17・6%(テレビ朝日)だった。松山が制した今年4月のマスターズ最終日(午前5時~同8時20分)の視聴率は、12・1%(いずれも数字はビデオリサーチ調べ、関東地区)だった。
東京五輪男子ゴルフ最終日の中継は、日曜日の家族団らんの時間帯でもあった。マスターズ優勝時以上の人数で、より幅の広い世代の日本人の目に、松山のプレーが映ったことになる。そう考えると、マスターズ王者はコロナ感染拡大防止に一役買い、さらに貴重な「オリンピック・レガシー」も残したのではないだろうか。
次世代を担う多くの子供たちの脳裏に、酷暑の中で懸命にメダルを目指す松山の雄姿が、深く刻まれた可能性はあるだろう。もしテレビで松山の挑戦を見て5年後、10年後、ゴルフを始めて松山に続く若い世代が出てくれば、東京五輪の視聴率が残した意義は、とてつもなく大きいと言える。
1957年に、東京五輪会場の霞ケ関CCで開かれた国別対抗戦のカナダカップ(現・ワールドカップ)。中村寅吉と小野光一の日本代表が個人・団体ともに優勝して日本中に「ゴルフブーム」をもたらした。それでも用具やプレー費用など経済的な理由で、日本ではどうしても「大人のスポーツ」の印象が強かった。
コロナ禍で昨年から、若い世代に「第2次ゴルフブーム」が到来中だ。日本人ゴルファー初の五輪メダル獲得こそ逃したが、松山の“聖地・霞ケ関CC”での熱闘は将来振り返った時に、日本ゴルフ界の大きな分岐点となる可能性を秘めていると思う。(ゴルフ担当・榎本 友一)