【三觜喜一が作る故障しないジュニアのスイング】社会性なくして大成なし


 ジュニアの指導で、カギを握るのが親です。子供を成長させるのも阻害するのも、一番身近にいる親だからです。

 私のスクールでは、初めに必ず親子そろって面接を受けてもらいます。「ゴルフ、やりたいの?」と聞いて、素直に「ハイ!」と言う子だけを入校させます。少しでも親が強制させている様子があれば、お断りします。私のスクールは基本的に全員、プロを目指すので、続けていくのは大変です。上達してくると、週末はラウンドレッスン、夏休みや春休みには試合もあります。遠征の送り迎えで休みはなくなり、お金もかかります。生半可な気持ちでは続かないのです。

抜群の柔軟性とバランス感覚を見せる、元体操選手だった練習生

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 レッスンで一番、気を付けているのは、社会性を身につけてほしいということです。いくらゴルフがうまくても、あいさつもできないようでは、人間として失格ですし、ゴルファーとしても大成しません。そのために、自分たちで考えるように指導しています。また上下関係を意識させるため、基本的に同級生はとりません。同い年で上達に差が出ると、親が比較したがり、結果的にいがみ合うことになるからです。しかし、コーチや上の子にものを言いやすい雰囲気は作っています。上の子は下を教えることで成長し、下は上を尊敬するようになります。

 よく、私のところに「自分もジュニア指導をやりたい」と言ってくるプロがいます。私は「自分の子供にも会えなくなりますよ。それでもいいですか?」と聞きます。本気でジュニア育成に取り組むと、自分の時間はほとんどなくなります。勉強も必要です。子供たちの発育、成長をちゃんと確認しながら、どの時期に何を教えればいいか、考えなくてはいけません。例えば、「ゴールデンエージ」と言われる小学4年から6年ぐらいまでの間は、子供はいろんなことを吸収するので、あえて難しいことをやらせます。遊び感覚でボールリフティングをやらせたり、ロブを教えたり。この時期に覚えた感覚は一生、忘れないものです。

 私はほかのプロやトレーナーと、「Think Golf」というチームを作り、毎週、勉強会を行っています。心理学の勉強も始めました。ジュニア育成には親も指導者も全身全霊をかけて取り組むことが必要だということを、分かっていただけたらと思います。=終わり=(取材、構成・鈴木憲夫)

 ◆三觜 喜一(みつはし・よしかず)1974年12月29日、神奈川県藤沢市生まれ。40歳。東京ゴルフ専門学校卒。PGAティーチングプロA級。OTTO CITTA(オットチッタ)ゴルフラボ&ラウンジ(世田谷区船橋2の7の6、TEL03・6411・3434)でレッスンを担当。小田原市では15年間、ジュニアの指導に当たっているほか、女子プロゴルファーの辻梨恵、植田希実子、和田みな子らも指導。

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