◆男子プロゴルフツアー パナソニックオープン 第3日(24日、兵庫・小野東洋GC=7113ヤード、パー72)
6打差33位から出たアマチュアの蝉川泰果(たいが、21)=東北福祉大4年=が1イーグル、9バーディー、ボギーなしの61で回り、通算16アンダーで首位に躍り出た。ツアー18戦目で6度目の予選通過から、アマの18ホール最少ストロークを61で更新する猛チャージで急浮上。昨年大会を制した同学年の中島啓太に続く、ツアー史上6人目のアマチュアV(73年のツアー制施行後)へ“王手”をかけた。ツアー12勝の宮本勝昌(50)=シーミュージック=、2週連続Vを狙う大槻智春(32)=真清創設=が首位タイ。
“泰果チャージ”で瞬く間に駆け上がった。蝉川は出だしでピン70センチにつけて最初のバーディーを挙げると、パー5の15番では「イメージ通り」という2オンからイーグルで勢いづいた。17番でこの日、最長10メートルを沈めたパットも好調。最終盤の8、9番でも50センチに寄せ、圧巻の3連続バーディーで締めた。
松山英樹らを輩出した名門・東北福祉大の主将だ。6月にABEMAツアー史上5人目のアマVを飾り、今月の世界アマでも個人2位に健闘した自信を胸に臨んだ男は「6差なら、まだ(優勝は)あるなと。ショットもパッティングも良く、はまった」と胸を張った。
前日のミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンで、同じ21歳の山下美夢有がツアー最少ストロークを「60」で更新。「俺も明日、12アンダーを目指すか」と大学の後輩キャディーの中村凜と目標を立てた。しかし、5つ伸ばした前半終了後に「あと4つくらい伸ばしたいな」と下方修正すると後輩に「いやいや、今日は12アンダーなんで」と尻をたたかれた。目標に1つ届かなかったが、33位からプロをごぼう抜きにした。
昨年大会は同学年で、日体大の現主将でもある中島啓太が史上5人目のアマVを達成し、1年後の今大会でプロデビューを果たした。2年連続アマ世界一にも輝き、世代をリードする存在となった中島に「ライバルという意識では見ている。ついていきたいし、追い越したい」と対抗心を燃やす。4月の関西オープンは予選首位から最終日は17位に転落して涙。世界アマも最終日にかわされた。同じてつを踏むまいと体重を5キロ増やす肉体改造を実施。ドライバーの飛距離も約15ヤード伸びた。「ここでも負けると、負け癖がついてしまう。自分の人生も変わる。克服しなければならない壁と思って、明日は臨む」。ここからが勝負だ。(宮崎 尚行)
◆蝉川 泰果(せみかわ・たいが)2001年1月11日、兵庫県出身。21歳。名前の由来はタイガー・ウッズで父・佳明さん(61)が名付けた。1歳からプラスチック製クラブでゴルフを始め、兵庫教育大付中から興国高を経て東北福祉大に進学。高2時に関西ジュニアゴルフ選手権、高3時に国体優勝。昨年は日本学生2位、日本アマ4位で22年度のナショナルチーム選出。ドライバーの平均飛距離は300ヤード超。175センチ、77キロ。