
優勝した藤田さいき(カメラ・谷口 健二)
◆女子プロゴルフツアー ▽大王製紙エリエールレディス 最終日(20日、愛媛・エリエールGC=6575ヤード、パー71)
1打差2位で出た藤田さいき(チェリーゴルフ)67をマークし、通算21アンダーで涙の逆転優勝を飾った。4バーディー、ボギーなしで回り、72ホールのツアー最少ストローク(パー71)を4打更新し、ツアー通算6勝目。88年のツアー制施行後、11年10月の富士通レディース以来、今年10月に2勝目を挙げた金田久美子に続く歴代2番目の11年35日のブランクVとなった。
藤田は1・2メートルのウィニングパットを慎重に決めると、しゃがみ込んだ。顔を両手で覆い、涙がドバッとあふれた。「とーっても長かった11年でした。そうですね、一言で表せないんですけど…素直にうれしい。この11年、つらかった涙をたくさん流してきているので、それが報われて良かったです」。2位だった6月の宮里藍サントリーレディスでは最後のパーパットの後、力尽きて尻もちをついたが、今回は踏ん張れた。
今季は2位が3度。復活Vに手が届きそうで届かなかった。「ゴルフを楽しもう」と新たな気持ちで挑んだ。スタート時、1打差を追った通算17勝の鈴木愛との一騎打ち。長いパー4の5番で右バンカーからの2打目をピン手前5メートルにつけてバーディー。9番パー5(495ヤード)は果敢に2オンを狙い、3打目の絶妙なアプローチで1メートルに寄せて伸ばした。サングラスをかけても終始、口角は上がっていた。鈴木と首位に並んだ13番で4メートルのバーディーチャンスをものにし、振り切った。
二人三脚でつかんだ復活Vだ。5勝目を挙げた後、11年11月22日の自身の誕生日に夫・和晃さんと結婚。夫は前の仕事を辞め、ツアーに同行し一番近くで支えてくれた。それでも11年間、勝利に届かず、どことなく「結婚してダメになった」と夫には厳しい言葉が飛ぶこともあった。そのたびに藤田自身も胸が痛んだ。
14年には子宮頸がんの手術し、「何回も病気や手術をしてきた」。20代後半からは万全で戦える体が、まず求められた。そんな中、メイントレーナーを務める黒岩祐次氏に見てもらい、8年前からは和晃さんも体のケアの方法を学び、黒岩氏がツアーに来られない時は夫が毎日体をほぐしてきた。「今回は明らかに良かった。(今季の2位の試合は)緊張するとガチガチ。でも今回はほどよい張り感だった」と手応えもあったという。藤田は会見で献身的に支えてくれた夫への思いを問われると涙をこらえられず、「2人で頑張って優勝しようとずっと言っていた。ずっと前向きなことしか言わない。辛い時も一番近くで支えてくれた人。本当に感謝の気持ちしかないです」と語った。
普段は試合期間中に「肉は食べない」というが、今大会中は松山市内の「シックな」お店のステーキにかぶりついた。実は夫婦の思い出の場所。7年前のこの大会中、夫婦げんかをした際に和晃さんがふらりと入り、仲直りのきっかけ作りで「おいしかったから一緒に行こう」と誘った。それ以来、毎年通っているという。藤田も「今週はずっと食べています。あっさりしていておいしい」と明かし、復活Vのパワーに変えた。
22日の結婚記念日&37歳の誕生日の祝杯は「最終戦が終わってから(和晃さん)」。次週は今季最終戦のメジャー、JLPGAツアー選手権リコー杯(宮崎)で2週連続優勝に挑む。宮里藍さん、横峯さくららと同学年の“飛ばし屋”は「まだ勝てると自分の中で確信になった。最高の形で最終戦に行くことができる。体力を回復させて、戦い抜きたいと思います。できるかぎり長く続けられるように」と力強かった。