ゴルフで2019年AIG全英女子オープンなど日米ツアー通算7勝の渋野日向子(サントリー)が24~25日に初主催となるジュニア・ソフトボール大会「2022年 渋野日向子杯 第1回岡山県小学生ソフトボール大会」を開催した。晴天の下、行われた25日の決勝は、男女混合チーム11、女子チーム4の計15チームが参加した。
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気温1度と冷え込んだ午前7時30分、渋野の姿はグラウンドにあった。開会式で「この大会を開催するにあたり、ご協力いただきました、企業の皆様、参加して下さった皆さん、本当にありがとうございます。私を育ててくれたソフトボールに恩返しをしたいという思いに、その夢を叶えて下さった皆様に感謝しながら、今日は楽しんで私も見たいと思います。皆さんもケガのないように楽しんで頑張って下さい」と主催者としてあいさつ。代表選手2人による力強い選手宣誓で幕を開けた。
トップアスリートが共演した。岡山南高を卒業し、昨年の東京五輪女子ソフトボールの金メダリスト・原田のどか外野手も特別ゲストで参加。開会式では渋野が投手、原田が打者で始球式。渋野はきれいなウィンドミル(大きく腕を一回転する投法)で右打者の外角に直球を投げ込む。会場がどっと沸くと、原田は「渋野プロもガチで投げると言ってくれたので」と打ちに行った。だが、一塁手がゴロを捕球して苦笑い。渋野は「原田選手に当てなくて良かった。いいボールが投げられた」と拍手をするとともにグーを突き上げて喜んだ。地元のスターの共演に、子供たちの目は輝いていた。
競技の枠を越えて経験を伝えた。試合の合間にはスナックゴルフ教室を開催。ショットではクラブの握り方、構え方まで熱心に指導した。渋野が出身の平島スポーツ少年団に所属する平島小3年の高木夕愛さん(9)は「初めてスナックゴルフをしたけど、楽しかった。渋野選手と久しぶりに会えてうれしかった。教え方も上手だった」と笑顔。操南小2年の本谷衣菜さん(8)は「ゴルフで世界一になったから好き」と告白。この日はクリスマスともあり、ゴルフの後には、“しぶこサンタ”からおなじみの駄菓子が子供たちに贈られた。
その後の女子、男女混合の決勝では、渋野と原田がそろって実況、解説席で子供たちのプレーを見守った。岡山イーストVS岡山ウエストの試合は3―0で迎えた5回表に岡山ウエストから3ランが飛び出し、土壇場で同点に。「本当にいい試合が見られましたよね。みんなの笑顔や悔しそうな表情を見て、私も毎日試合の後は泣いていて、負けず嫌いの日々を送っていた。そんな昔を思い出しました。みんなからもいろんなことを学びました」と刺激をもらった。
午後からもイベントが盛りだくさん。ホームラン、スピードボール、ベースランニング、スナックゴルフの大会を行い、終わりには雨もぱらつく中、急きょ約30分間のサイン会を実施して子供たちとの触れ合いを楽しんだ。表彰式では子供たちに直接賞状を手渡し「私の名前でこういう大会を開催できたことが夢のようで。みんなが参加してくれたからできた。本当に感謝しかないです」。そして子供たちに言葉を贈った。「みんな、悔しい時は悔しい顔をしていいし、うれしい時はうれし涙を流したっていい。自分の思った感情を表に出していい。来年の私の活力になりました。私もみんなを見習って頑張っていきたい」。子供たちは元気よくうなずいた。
ジュニア大会の開催は、19年の初優勝後から胸に秘めていた。「プロになって夢でもあった。ゴルフもソフトボールもスナックゴルフの大会も開催したい。育ててくれた競技に恩返しをしたい。それが最初にかなったのがソフトボールだった」という。コロナ禍などを経てようやく「ゴルフと共に慣れ親しんだソフトボールを通じて、ジュニアの思い出に残ることが何かできないか」という考えを軸に、渋野の名を冠して第1回を迎えた。
渋野は小学2年から地元のチームでソフトボールに励み、高学年になると投手を務めた。決勝にも出場した岡山市の東地区のチーム「岡山イースト」にも選抜された。今回、RSK山陽放送などが後援、サントリーを始めとした7社の特別協賛、協賛4社の後押しがあって、渋野の夢が実現した。「自分一人じゃ何もできなかった。本当に感謝しかないです」と語った。来年以降の第2回の開催にも前向きで「ぜひともやりたい。今度は(決勝の)試合も(引き分けの場合は)タイブレイクもやりたいですね。選手が悔いのないように」と見据えた。渋野の思いは、次世代に夢を与え続ける。