バーチャルとリアルが融合!ゴルフの楽しさを増長させた米男子ゴルフの新リーグ 「TGL」が持つ可能性


2025年1月7日、TGL開幕戦で巨大スクリーンにショットを打つファウラー(写真は全てTGL提供)

2025年1月7日、TGL開幕戦で巨大スクリーンにショットを打つファウラー(写真は全てTGL提供)

 バーチャルとリアルが融合した米男子ゴルフの新リーグ「TGL」が話題を呼んでいる。1月から米フロリダ州の屋内施設でシミュレーターを使ってチーム戦で争われ、今月25~26日に決勝を開催。創設者のタイガー・ウッズ(米国)とロリー・マキロイ(北アイルランド)らスター選手24人が6チームで対戦し、松山英樹(33)=LEXUS=も参戦した。時短、エンターテインメント性、臨場感。米男子のPGAツアーと連係して大会を運営する「TMRWスポーツ」のクリス・ライマー副社長に魅力と今後の展望を聞いた。(星野 浩司)

 大音量の音楽、華やかなライト演出で彩られ、スター選手がショットを打てば歓声がアリーナに響く。フロリダ州SoFiセンターで1月に開幕したTGLは米国で熱狂を生んでいる。マキロイと同じボストン・コモンGで出場した松山は「トーナメントより緊張した」。一方、TGL運営会社のライマー副社長は「試合後の会見で選手から45回くらい『Fun(楽しい)』の言葉が出た」と明かす。

 第1打など長いショットは巨大スクリーン(縦14メートル×横20メートル)に打つが、1月にはウッズらが3人連続で池ポチャ…。海上や溶岩地帯など普通ではありえないバーチャルコース。通常と勝手が違う環境で見られる有名選手のハプニングもTGLならではだ。50ヤード以内のショットは実際のグリーンに歩いて移動してプレーする。選手への負担も軽減される。1打40秒以内と義務付けられ、1試合はゴルフの半分以下の約2時間で終わる。同副社長は「競技時間が短い。エンターテインメント性が高く、臨場感がすごい」と3つの魅力を挙げた。

 チケットは160ドル(約2万4000円)から販売。試合の1時間前からDJが会場を盛り上げ、約1500人収容の客席は熱気に包まれる。派手なライト演出は米プロレス団体「WWE」を手掛ける会社が担当。カメラは80台が設置され、ピンの先端などさまざまな角度からスーパープレーを配信する。選手はマイクを装着し、ライン読みなど会話が聞けるなど臨場感が満載。「NBAやNHLのような雰囲気で本当に楽しい場所。選手もファンも驚いている」とライマー氏は言う。

 PGAツアーは50歳以上のファンが多い傾向があるが、TGLは若年層に反響がある。同副社長によると、大会を中継するESPNで18~49歳の視聴者がバスケットボール・NBAと並ぶ42%。アメフトのNFL(35%)、野球のMLB(30%)より多い。「ゴルフではありえない数字で満足している。若い人がTGLでスター選手を見て、PGAツアーを見てくれればと思う」と見据えた。

 TGLの誕生は9年前にさかのぼる。16年リオデジャネイロ五輪。TMRWスポーツ創業者マイク・マッカーリー氏が112年ぶりに復活したゴルフ競技を観戦し、国を背負う選手の真剣勝負に感銘を受けた。夫人とともにインドアゴルフ大会の構想を練り、約5年前にウッズに提案すると、約10分後に「私もやります」と即答。22年8月に発足が発表された。

 昨年1月に開幕予定だったが、会場建設中の事故により1年延期。当初の空気注入式ドームから最新テクノロジーを駆使した施設として新設された。ライマー副社長は「関係者は皆落ち込んだけど、時間が増えたことは恵みになった。より良い会場、大会を作るために考える良い時間だった」と振り返った。

 今月末で今大会は終了。今後は開催エリアや規模の拡大を見据える。TGL関係者は「今回が成功しているので、チームを増やそうと考えている。いつか西海岸にアリーナを作り、PGAツアーが西側にいる時に参加しやすい大会にしたい。女子のLPGAが将来的に入れるように話を進めている。男女で一緒に戦えると、より盛り上がると思う」と将来像を語った。

 ◆TGL(Tech―Rich Golf League)ウッズとマキロイが創設し、25年1月7日に開幕した新大会。屋内施設で6チームが総当たりのリーグ戦を行い、3月に決勝を開催。各チーム4人中3人が出場し、9ホールまでは3人が交互に打って競い、残り6ホールはマッチプレー。計15ホールの合計得点で争う。第1打などは巨大シミュレーター、50ヤード以内は実際のグリーンでプレー。1打40秒以内に打つ、獲得ポイントが倍増する「ハンマー」など独自ルールがある。

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