全英オープン選手権で松山英樹選手は通算8アンダーの18位タイにとどまりました。
後半失速したのは、12番348ヤードパー4。風の影響を受けやすいホールでした。
ティーショットは、アイアンでグリーン手前105ヤード付近まで運び、セカンドはグリーンに乗るも手前でバックスピンが掛かったため、傾斜から落ちてしまいました。
パターで傾斜を登らせるバーディーパットも、1mほどショート。
松山選手は、この短いパーパットを外してしまい、ここに来て痛恨のボギー。
後半の状況でスコアを伸ばすことができたら・・・。
アゲンストの影響、12番ホールでのボギーがなければ、きっと違う展開になっていたかもしれません。
今回は、松山選手を応援している全てのゴルファーへ、風の中での対応策をお知らせできたらと思います。
■風の中の手順
1.風向き確認
(風が吹く方向、強さの確認、アドレス付近とグリーン上の違いを確認)
どこから、どのくらいの強さで風が吹いているか、確認します。
風には種類があります。海風は重く戻される度合が大きく、山岳のフォローは気圧の関係もあり良く飛びます。
同時に、アドレス付近とグリーン上の風向きが違う場合があります。アドレス付近がフォローでも、グリーン上がアゲンストの場合があります。判断を誤ると、クラブ選択のミスにより手前にショートする結果となります。
また、木立ちに囲まれたピンフラッグは揺れていない状況にあり、実際は上空で風が吹いている場合があり注意が必要です。
2.球筋確認
(風に乗せる、風にぶつける)
風の方向や強さが計算できたら、次にその風の利用方法を考えます。
サイドウインド(横風)であるほど、乗せるか、ぶつけるかを決めます。
例えば、右からのフック風にドローで乗せるか、フェードでぶつけるかとなります。
前者は、風に乗せるので距離が出ます。短いクラブを選び、風に運ばれて曲がり幅も大きいため、ボールが落ちてからのランも計算します。
後者は、風にぶつけるために、クラブの番手を上げて、曲がり幅は小さく、ランも少ないと考えます。
3.使用クラブ選択とスイングイメージ
作法が決まったら、クラブを選び、実際のイメージを作っていきます。
フェードやスライスをイメージした場合は、ボールを1個左へ。フェースは閉じ気味、アウトサイドへバックスイングします。
また、ドローやフックをイメージした場合は、ボールを1個右へ。フェースは開き気味、インサイドへバックスイングします。
難しい点は、この時点で風が変わる可能性があることです。もう一度作り直す場合は、忍耐力を持って対応しましょう。
■風の中の注意点
◯アゲンストのショートアイアン編
スピン量が多くなるショートアイアンは、風の影響を一番受けやすいと言えます。
対応方法として、影響の受けにくい低い球、もしくはスピン量の少ない球を目指していきます。
前者は、ボールを中に置き、右手の角度を維持して、クオーターの位置からスイングを行い、フォローは低く抑えます。1番手大きなクラブを持ち、コンパクトなスイングを心がけます。
後者は、1番手大きなクラブを持ち、インサイドで低い位置からドロー回転でボールを打ちぬくイメージでスイングします。
いずれの打ち方も、体重移動や軸ブレしてしまうと、打点が安定しません。
左重心スイングを取り入れていきましょう!
◯アゲンストのスライス風、ドライバー編
アマチュアの皆さんにとって、もっとも厄介な風が左からのアゲンストだと言えます。
スライサーは、風の影響を受けやすく、ボールは右への曲がりが加速していきます。
対応策として、①中弾道、②スピン量、③ドロー系となります。
持ち球がスライス系なのに、簡単に対応策を行えるのでしょうか?
①中弾道
両腕を伸ばしてインサイドのスイングアークを確保します。右肘をたたんでインパクトで伸ばすスイングでは、スピン量が増してボールが高く上がり、風の影響を受けやすくなります。
②スピン量
スピン量を2000~2500回転以内に収めるには、フェースのローテーションを抑え、インサイドからのスイング軌道を確保し、フォローでも左腕をしっかりと伸ばしていきます。
ポイントは、左重心でアドレスをスタートさせ、バックスイングの初期にニーフレックス(左脚を前に、右脚を伸ばして)を行い、右腰を60度後方に回転させることです。
これにより、インサイドからの軌道を得やすく、スピン量を少なく保つ事ができます。
③ドロー系
ドロー系を打つには、クラブヘッドが低い位置から入る必要があります。
腕の構造上、ダウンからインパクトにかけて、ハイ&ローはフェード系、ロー&ハイはドロー系となります。手元を低く下ろすには、ダウンスイングからインパクトにかけて、身体を開かないように意識します。
同時にサイドベンド(バックスイングでは左サイドを曲げる)からのインサイドダウンを行います。
また、インパクト付近で、曲がった左足を伸展させていくことも、左サイドの壁が出来、クラブが走り、ボールが捕まるポイントとなります。
◯フォローのショートアイアン
グリーンフロントエッジまでの距離を、正確に把握していきます。
また、バックスピンは、上空の風の影響を受け、反転します。よって、グリーン上では止まりづらくなり、ランが多くなる傾向があります。
例えば、フォローのセカンドショットで、ピンが手前に位置して、しかもバンカーが左右にある状況があります。手前からランを計算して攻めるか、直接ピンを狙うか、決断しなければなりません。
◯強風下のパッティング
風が強い中で育った選手は、パターのテークバックが小さく、鋭く打ちぬくスタイルが多いと言えます。ストローク中も、風の影響があることを意味しています。
下半身を安定させ、重心を低く保ち、それでいて、上半身をスムーズに動かなければならない。
一般的に低い姿勢は、打たなくてよいので、下りのパットに向いています。
上りのパットはその逆に位置しています。
では、アゲンストの上りのパットはどのように対応すべきか?
重心を下げて、姿勢を低くすると、上半身の前傾が深くなり、ショートしやすくなります。
また、届かせようと強くヒットする場合、フェースはかぶり、左へ飛びやすくなります。
プロならではの工夫があると思います!
また、ボールの勢いが弱まるカップ付近でも、風の影響があります。
ここも、しっかりと予測していきましょう。
■ショットの注意点
①テークバックをゆっくりと上げるプレーヤー
②テークバックをスムーズに上げるプレーヤー
③トップで止まり、切り替えしが見えるプレーヤー
④トップが止まらず、一連の動きに見えるプレーヤー
ショットの注意点としては、一連の動きが止まることなく、スムーズな動きとなるように心がけます。インパクトが意識されていないスイングの方が風の影響力を受けにくと言えます。上記の理想は、②と④となります。
①ゆっくからの早い動きは、リズムやテンポに頼るところが多いスイングと言えます。強風下では、インパクトでタイミングが微妙に狂い、その狂いは200ヤード先で大差となります。
③トップで止まるとは、静の状態いえます。ここからの加速を行うよりも、一連の動きの中にトップさえも通過点であるスイングの方が、効率的といえます。
静止状態はアドレスだけであり、バックスイングがスタートした時点からフィニッシュまではクラブが体の近くを通過していくイメージを持ちます。
状況が厳しくなればなるほど、メンテナスフリーなスイングの方が好ゲームが期待できます。
今回もご覧いただきありがとうございます。
一人でも多くの方が、短期間に上達してゴルフゲームをたのしんで頂けることを1コーチとして願っております。
また、次回にお逢いしましょう。
体重移動がいらない左重心理論の第一人者小暮博則の60日間アブリ、「左重心で行こう」
http://videobook.jp/pfga/
◆小暮博則(こぐれ・ひろのり)
1972年11月27日生まれ。埼玉県出身。明治大学商学部商学科卒業。JGTO(日本ゴルフツアー機構)プロ。PGAティーチングプロ。2003年 JGTO ファイナルQT進出。2013年から東京慈恵会医科大学ゴルフ部コーチに就任している。就任後、同大学は2013年度全日本医科大学ゴルフ連盟秋季大会個人優勝、2014年度全日本医科大学ゴルフ連盟春季大会団体優勝を果たす。PFGA(パーフェクトゴルフアカデミー)のゴルフスクールを主宰し、赤坂(東京都)と小手指(埼玉県)にて展開している。 著書に『一生ブレないスイング理論 “左重心スイング理論”でゴルフの常識が変わる』(カンゼン)がある。
PFGA(パーフェクトゴルフアカデミー)ゴルフスクール
http://pfga.co.jp/