
第3日、通算8アンダーで首位の稲垣那奈子(カメラ・渡辺 了文)
◆女子プロゴルフツアー リゾートトラストレディス 第3日(31日、徳島・グランディ鳴門GC36=6585ヤード、パー72)
4位から出たプロ2年目の“ワセジョ”稲垣那奈子(24)=三菱電機=が3バーディー、1ボギーの70で回り、通算8アンダーで青木瀬令奈(32)=リシャール・ミル=、三ケ島かな(28)=ランテック=とトップに並んだ。2000年度生まれのミレニアム世代が、早大卒の女子選手では初めてのツアー優勝に王手をかけた。最大瞬間風速15・9メートル(午後0時22分)のこの日の平均スコアは74・9104。アンダーパーは67人中5人だけだった。
強風荒ぶるムービングデーの最後、稲垣の名前がリーダーボードの一番上にあった。「風が昨日までと違って最初はドタバタしてしまったけど、5番ぐらいから自分のゴルフができた」。4番で3パットを要し、この日唯一のボギーを喫したところで目が覚めた。「いつも通り」を心がけ、下半身リードのスイングに集中。12番パー3でピン手前4メートルにつけ、16番パー5ではピン右7メートルをねじ込んだ。
古江彩佳らと同じミレニアム世代だ。高校3年時にプロテストを受験する選手が大半の中、早大のスポーツ科学部に進学して、ゴルフ部に所属した。中学時代に腰椎分離症に見舞われ、ヘルニア寸前まで深刻化したことで「未熟だった。勉強してからプロになりたいと思った。自分の体をコンディショニングできる力をつけたかった」。卒業論文のテーマは「ゴルファーと腰痛の関連性」。400人近い選手からアンケートを取り完成させた力作だ。「知識がないと考えることもしなかった。考えながらけがをしないように取り組めるようになった」と4年間の学びは生きている。
研究熱心な姿勢は、オフの取り組みにも表れている。プロ野球の中日・涌井秀章投手が主催する自主トレに3年連続で参加し、巨人・横川凱投手らと一緒に汗を流した。「涌井さんは自分に妥協しないし、常に追い込む」とアスリートのあるべき姿を学んだ。1年目は「こんなに走る人たちいるんだ」と衝撃を受けた。長い距離に加え、100メートル走を10本、20本と繰り返す。最初は立っていられないほどだったが、年を追うごとに下半身強化を実感し「ちょっとのことだと、へこたれなくなった」と精神面も成長した。
ツアーでの自己最高位は14位でトップ10入りさえない24歳が、初めて最終日を最終組でプレーする。「意識してしまうと思うけど、自分のゴルフをするだけ」。文武両道の24歳が早大卒女子の初優勝へ、訪れたチャンスをつかみ取る。(高木 恵)
◆稲垣 那奈子(いながき・ななこ)2000年8月24日、埼玉・川口市生まれ。24歳。早大卒。10歳のときに両親の影響でゴルフを始める。2023年11月のプロテストに2度目の挑戦で合格。箱根駅伝で活躍した井川龍人と同じ授業を受けたことがあり「テレビで応援していた」。QTランキング47位の資格で今季出場。趣味は音楽鑑賞とドライブ。特技はスキーと水泳。164センチ。血液型B。