
85年2月、2人の弟たちに模範ショットを見せる尾崎さん(右)(左から直道、健夫、長男の智春さん)
23日に死去した尾崎将司さん(享年78)は選手として通算113勝を挙げただけでなく、のちにトッププロに成長した弟子を数多く育てた。三弟で男子ツアー32勝の尾崎直道(69)、同14勝の飯合肇(71)ら「ジャンボ軍団」をはじめ、女子では教え子の西郷真央(24)は今年、海外メジャーのシェブロン選手権で優勝。佐久間朱莉(しゅり、23)は今季国内年間女王へと飛躍。自作の器具で趣向を凝らした独特な練習法で後進育成に励んだ。ジャンボ軍団の1人で、男子ツアー5勝の羽川豊(68)が師匠を悼んだ。
尾崎さんは熱いゲキと趣向を凝らした練習法などで、男女ともに次々と実力のある後進を育成してきた。
千葉市内の自宅に併設された「総面積非公表」の広大な練習場。2つのグリーンにバンカーも備わっている。尾崎さんは亡くなる約1か月前まで練習場でジュニアを指導。ホームセンターで購入した資材などで、自作した大きな羽根付きの素振り棒を教え子に振らせ、全身の筋肉を使ってスイング固め。タイヤを砂場でゆっくり引いたり走ったりして下半身を強化。約280ヤードの打撃練習場でショット技術を磨かせた。尾崎さんの弟・尾崎健夫や直道、飯合ら「ジャンボ軍団」でジュニアを指導することもあり、原英莉花や笹生優花、西郷や佐久間らもプロへの礎を築いた。
過去にプロ野球界からも元近鉄・石毛博史、元ヤクルト・鈴木健らがジャンボ軍団の自主トレに参加。午前10時から午後4時過ぎまで野球のティー打撃、バレーボールなどを使ったトレーニングで肉体、精神を両面で鍛えた。鈴木には「今の感じでは4番は無理だ。これから意識改革していく」と熱血指導。一方、還暦を迎えた07年には、鈴木に譲り受けた超音波による治療器具を使って体をケアするなど、科学的で新しいものを貪欲に試した。
門下生を厳しく指導し、プロ転向して自立後は細かい言葉や指導を加えるよりも静かに見守った。今季は尾崎さんへの思いもあってか門下生たちが快進撃ラッシュ。西郷が4月にシェブロン選手権で初優勝し、原は米下部ツアーのランク5位で来季米ツアー昇格決定。佐久間は初優勝を含む4勝で年間女王に輝いた。
厳しいゲキは期待の裏返しだ。今月2日、年間女王獲得を報告に訪れた佐久間には「おめでとう」と直後に「まだメジャーは取ってないのか」とハッパをかけた。昨年末から闘病後は室内から窓を開けて見守ることが増えたが、17歳の香川友には「若いから焦らずやれ」と背中を押した。自身と弟子らを合わせて国内男女ツアー200勝以上。厳しさと優しさを併せ持つ師匠の愛のムチが、後進の飛躍につながった。

