熊本県出身の笠りつ子(28)=京セラ=が、被災地に今季初勝利を贈った。1打差6位から66で回って通算13アンダーとし、2位を2打引き離して逆転優勝。4月の熊本地震、さらに6月の大雨で自宅が被災した28歳が、昨年3月のアクサレディス以来のツアー4勝目を飾った。2位には佐伯三貴(31)=日立アプライアンス=が入った。
4月14日の熊本地震の最初の発生からちょうど4か月。笠は約1年5か月ぶりとなった優勝インタビューで、目を潤ませながらマイクを握った。熊本地震、さらに6月の大雨で自宅の屋根は崩れ落ち、自らの部屋はいまだに使えない。「優勝賞金で家を建てたいと思います」。18番グリーンを囲んだ大観衆から大きな拍手が送られた。
無心で今季初勝利をつかんだ。「きょうは最後まで一度も(リーダーズ)ボードを見なかった。自分のベストを尽くそうと思った」。12番では約15ヤードをサンドウェッジでチップインバーディー。貪欲に7バーディーを奪い、66の猛チャージにつなげた。
今季19試合中12戦でトップ10。2位が2回と何度もV戦線に加わりながら、土壇場で本来のプレーができなかった。リオ五輪男子日本代表の片山晋呉に助言を求めると「勝つときが来るから待つしかない」と我慢を諭された。頭に浮かんだ考えが、他人のスコアを気にせず自分のプレーに集中することだった。
家族は震災後の約2か月、車中泊やテントでの生活が続いた。故郷で苦しむ人々を勇気づけるためにも勝ちたかった。「良い報告ができたのはうれしい。熊本の人は強いので、今は前向きになっていると思う」。笠が満開の笑顔を咲かせた。(高橋 宏磁)