宮里藍は日程をうっかり…けっこう多いプロゴルファーの勘違い


宮里藍

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 11月11日、日本ゴルフ史に残る珍事が生まれた。女子プロゴルフツアーの伊藤園レディス初日。上原彩子が「69オーバー、141」というスコアを記録した。男女を通じて日本ツアー史上最悪。原因は「特別規則の勘違い」だった。11日は早朝から雨が降り続き、競技委員会はフェアウェーとカラーにあるボールについて「拾い上げてボールを拭き、元の位置にボールを戻す」という特別規則を追加した。

 ところが、上原は特別規則を「元の場所から1クラブレングス以内にボールを置ける」と思い込んだ。15ホールで合計19回、本来の場所とは違う場所に置き直してボールを打った。全てが「誤所からのプレー」(2罰打)となった。19×2罰打で締めて38罰打。さらに15ホールで、この罰打を加算せずにスコアを提出したため過少申告になった。15ホールに2罰打が科せられ、15×2で計30罰打。上原は提出したスコアの「73」に対し、合計で「68罰打」が科せられて141となった。

 米ツアーでは同様のケースの場合「1クラブレングス以内にボールを置くことができる」という特別規則を追加することが多い。米国でのプレーが多い上原は、日米の違いを確認せず、18ホールを消化してしまった。同伴競技者がなぜ指摘しなかったのか?という疑問も残るが「完全に私の確認ミス。思い違いです」と反省しきりだった。

 数字と戦うプロゴルファーだが、意外にもけっこうミスがある。かつて世界ランク1位に輝いた宮里藍は、なんと日程を間違えた。1998年の世界ジュニア選手権(米国)。中学1年生だった藍は、3日間大会を4日間大会だと勘違いした。悪天候などで競技が延長された場合だけ、最終日の翌日に「予備日」を用意していた。ところが、英語での注意書きを読み間違えてしまい、3日間の競技を「4日間ある」と早とちりした。最終日の翌日。準備してコースを訪れたが、選手は誰もいない。ぼう然と立ちつくしていると、大会関係者に声をかけられた。「試合? もう昨日で終わったよ」。説明され、ようやく間違いに気づいた。

 この話には続きがある。気を利かせた主催者が「5位だった君だけにトロフィーを渡していなかったね」と、藍ひとりのためにその場で“表彰式”を開催してくれたのだ。勘違いを責められることはなかった。「実は、藍が米ツアーを目指すきっかけになったのが98年の世界ジュニア。米国の方の心遣いに感激して『米国で戦いたい』と決意したんです。今の藍があるのも、あの試合があったからなんです」と母の豊子さんが明かしてくれた。

 日本男子ツアーで32勝し永久シードまで獲得した尾崎直道は、55歳の時に思い違いから失格になっている。12年4月の東建ホームメートカップ初日。尾崎直はマウスピースを口に入れたままプレーした。これが「プレーヤーの援助」にあたり、ゴルフ規則「14―3a」に抵触して失格になった。男子ツアー関係者が「記憶にない」と語るほどの珍事だった。

 ゴルフの総本山「R&A」が発行した今年度の「ゴルフ規則裁定集」の日本語版は、652ページにも及ぶ。プロでも全てを詳細に理解している選手は少ない。15年5月の中京テレビ・ブリヂストンレディスで、過少申告により失格となった鈴木愛は「規則は毎年のように変わるし、全部覚えるのは無理だと思う」と諦め顔だった。

 不注意や勘違いはプロにもある。だから、あっと驚くような珍事や、心温まるエピソードを生むのだろう。(記者コラム・高橋 宏磁)

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