練習場でアイアンを打つ重永亜斗夢はマスク姿で汗を流した（カメラ・相川 和寛）
男子プロゴルフツアーの今季最終戦、日本シリーズＪＴカップは２９日から４日間、東京・稲城市の東京よみうりＣＣ（７０２３ヤード、パー７０）で行われる。今季国内開幕戦の東建ホームメイトカップで悲願の初優勝を果たし、今大会に初出場する重永亜斗夢（３０）＝ホームテック＝は２６日、コースで約１時間、調整した。ウイルス性腸炎を発症し、先週のカシオワールドオープン（２２～２５日）を欠場。ベスト体重の６０キロから５５キロに激減した“細腕アトム”は体力と気力を振り絞って２０１８年日本男子プロゴルフツアー最強決定戦に挑む。
手塚治虫さんの名作漫画「鉄腕アトム」に名前が由来する重永は“細腕アトム”になっていた。この日、ラウンドは行わず、約３０分、ショット練習。「飛距離が落ちている。約２６０ヤードしか飛ばない」と嘆いた。
体調に異変が生じたのは２０日だった。熊本の自宅からカシオワールドオープンが行われる高知の会場へ向かおうとした朝、腸炎に。「２１日にカシオワールドの欠場を決めた。腹痛は止まらないし、食べられない。体重は５５キロまで減りました」。ベスト体重６０キロでも十分に軽量の体はさらに薄くなった。
プロゴルファーとしては、５５キロはあまりにも軽い。１７年度の「学校保健統計」によると、中学３年生男子の平均体重は５３・９キロ、高校１年生男子は５８・９キロ。一般的な中学３年生に近い。今大会出場３０選手の中では、もちろん最軽量。２番目に軽い６３キロの今平周吾（２６）を引き離し“断トツ”。最重量１００キロを誇る南アフリカのショーン・ノリス（３６）の半分ちょっとにすぎない。今大会３勝の名ゴルファー・杉原輝雄さんは５７キロだった。正確な記録は残っていないが、大会関係者は「５５キロは大会史上最軽量クラス」と話す。
重永は、国の難病に指定される潰瘍性大腸炎を患っており、シーズン通して体と向き合っている。「２４日から少しずつ体調が回復した。日本シリーズＪＴカップだけは、どうしても出たかった」と強い意気込みを明かす。
今季、ドライバー平均飛距離は２７８・５２ヤードでランク６５位。一方、フェアウェーキープ率は６１・７７％でランク１０位。「飛ばないけど曲がらない」３０歳が正確性が求められる東京よみうりＣＣで活躍する可能性は十分に残っている。「４日間、戦い抜きます」とキッパリ話す。体重は軽くても、決意は重い。（竹内 達朗）