【武藤一彦 王者の系譜】石川遼がいるではないか!


6番、バーディーを奪い歓声に応える石川遼(左は小平智)

6番、バーディーを奪い歓声に応える石川遼(左は小平智)

 20代が14人、30代以上が16人、くっきり世代を割って大混戦が幕を開けた。

 その中で、石川の存在感が浮かび上がった。アマだった15歳でプロツアーに勝ち16歳でプロ転向。3年後の中日クラウンズでは58のツアー最少ストロークで優勝した。15年には日本シリーズで13勝目を挙げ、現在通算14勝。ホールアウト後、今大会の20代の大量発生をこう評した。「ジュニア時代を一緒に過ごした中から(稲森が)日本オープン優勝。そしていま(今平)周吾が賞金王。こうした選手を脅かす人が、もっともっと出てきてほしいですね」。自身は27歳。復帰途上の自分も含めての未来像、自分への励ましとも受け取れた。

 10年前に遡る。2008年の日本ジュニア選手権は8月、埼玉・霞ケ関CC西で行われた。20年東京五輪の開催コース。この時優勝したのが埼玉栄高1年の今平だった。最終日最終組を一緒に回った明徳義塾高2年生の松山英樹を5打もちぎった。同大会には出水田大二郎、秋吉翔太が出場。さらに東Cで同時開催された中学生の部には時松源蔵(現在は改名して隆光)、稲森佑貴がいた。何が言いたいか。今シリーズを席巻する20代の面々だ。

 今平とノリスの賞金王争いは、ノリスがアプローチミスを連発して首位と10打差の最下位。戦況はノリスの優勝さえなければ、今平の賞金王が決まる。こうなったら首位に立った46歳のヤン、2位につけた特徴的なスイングの45歳の崔虎星でもいい。ベテランにテコ入れするなら50歳、谷口の優勝が一番いい。今平への援護射撃、よろしく!といった心境だ。

 恥も外聞もなく「今平、賞金王」への熱き思いがたぎるのである。ただ20代といえば、石川がいるではないか。僕を忘れなさんな、と立ち塞がる。まだ27歳。2アンダースタート。虎視眈々(たんたん)とは、このことだ。

(ゴルフジャーナリスト)

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