【武藤一彦 王者の系譜】崔の“面白スイング”プレーヤー、ウッズ、ジャンボの理論と共通点


13年の日本シリーズでの崔虎星のティーショット

13年の日本シリーズでの崔虎星のティーショット

 ◆報知新聞社主催 男子プロゴルフツアー今季最終戦 日本シリーズJTカップ第2日(30日、東京よみうりCC=7023ヤード、パー70)

 練習場はスマホを構えた素人写真家が鈴なり、ティーグラウンドはパフォーマンスを一目見ようと黒山の人だかりだ。崔の“面白スイング”が、ギャラリーに大受けしている。

 ドライバーショットは極端なフックスタンスでフェースをかぶせ、バックスイングはアップライト。体を大きくひねり、インパクトに向け振り下ろす。パシーンと打撃音が響いた後、驚きのダンスが始まる。インパクトの瞬間、右足が飛び出す球を追うがごとくバレエダンサーのように飛球方向へ。その格好でフィニッシュを迎えるが、勢いで2歩、3歩とフィニッシュしたまま歩いていくこともある。歯を食いしばり、目は必死に弾道を追う。このひたむきさが人の心を打つのだろう。「キャーッ」と悲鳴が起こる。次いで「ワーッ」と拍手だ。

 「真っすぐ遠くへ飛ばそうとやっていたらこうなった。気持ちが入った時は動きが大きくなる」。日本シリーズJTカップ出場は5年ぶり2度目。スイングは完成の域に入った。

 変わったスイングだが、一理も二理もある。ゲーリー・プレーヤー(南アフリカ)は、「打ったら歩け。全体重を左に移すのだ」と勧めていた。タイガー・ウッズ(米国)はメジャーの深いラフからのショットで、インパクトと同時に右足を後ろにスイング、次いで前へ振り回した。そう、ラフの強い抵抗に負けまいとした時、右足は踊り出す。まさに“ダンサーの足”と化すのだ。

 さらに、15センチもある特製のハイティーに乗せた球を、ものの見事にクリーンヒットする。ジャンボ尾崎の全盛期の武器と同じ。ジャンボは当時こう話していた。「ロフトのない金属ヘッドのドライバーでより遠くに、より正確に飛ばすには、高いティーアップが条件。ただし下からあおってはだめ。インパクトをゾーンでとらえる。ボールをはじくのではなく、レベルスイングで体の大きな筋肉を使うのだ」

 右肩を落としたら、ヘッドは球の下を通って空振りになる。バレエダンサーの足は、レベルで回すための工夫である。(ゴルフジャーナリスト)

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