「藍さん超え」の快挙を逃し、2位惜敗の19歳・山下美夢有「90点。いいプレーができた」


11番でバーディーパットを外した山下美夢有。右は高橋彩華

11番でバーディーパットを外した山下美夢有。右は高橋彩華

◆女子プロゴルフツアーヤマハレディース葛城最終日(4日、静岡・葛城GC山名C=6564ヤード、パー72)

 3打差6位から出た稲見萌寧(21)=都築電気=が6バーディー、ボギーなしの66で回り、通算12アンダーで優勝した。第2日終了時点では24位にとどまっていたが、第3日、最終日と連続で66をマークし、大逆転。3週前の明治安田生命レディスに続き、今年2勝目。今季3勝目、通算4勝目を挙げた。

 初日から首位を走り続けた山下美夢有(19)は5バーディー、2ボギーの70で、ふたつスコアを伸ばしたが、1打及ばずに2位惜敗。1988年ツアー制施行後、4日間競技の完全Vは2005年日本女子オープンで達成した宮里藍の20歳105日を超える史上初の10代での快挙を、あと一歩で逃した。

 山下は最終18番パー5で、入れればプレーオフの7メートルのバーディーを決められず、天を仰いだ。しかし、1・5メートルのパーパットをしっかりと決めて、単独2位。「バーディーパットは必ずオーバーさせようと思った。最後のパットは、優勝はなくなりましたが、気持ちを切り替えて、集中して打てました。自己採点すれば90点。いいプレーができました」。涙なし。19歳は爽やかに話した。

 山下は大阪桐蔭高3年時の2019年11月にプロテストに一発合格した。しかし、昨年、ツアーデビュー後、3試合連続で予選落ちし、プロの壁にぶつかった。昨年8月、状況を打開するため、弾道追尾システムを活用した弾道計測器の「トラックマン」を購入。「約300万円でした。一番、高い買い物でした」と山下は笑顔で振り返る。距離、ヘッドスピード、スピン量など正確な数値を計測できる最先端機機器のトラックマン。国内外のトッププロは持っている選手が多いが、当時の山下は、まだ、生涯獲得賞金が0円。自らの将来を信じ、思い切った先行投資だった。

 「番手の間の距離を合わせるため、グリップ位置やハーフショットで対応できるようになり、ゴルフがレベルアップしました」ときっぱり話す。トラックマンを活用した練習を始めると成績は急上昇。昨年9月のゴルフ5レディスで初めて予選を通過した(19位)。その後も順調に成績を残し、前週までの獲得賞金は1396万6914円(ランク47位)。さらに今週、惜敗したものの、自己最高の2位で賞金880万円を上積みした。すでに先行投資の約300万円を楽々と回収し、その7・5倍も稼いだ。

 今年1月、日本男子ツアー通算48勝の中嶋常幸(66)が主宰する合宿に参加。「プレッシャーは必ずある。それを楽しむことが大事だ」“レジェンド”から金言を授かった。第3日は「あまり、プレーを楽しむことはできなかった」と話したが、より大きなプレッシャーがかかった最終日は「プレーを楽しむことができました」と充実した表情で話した。

 身長150センチ。水を入れた約20キロのポリタンクで筋力トレーニングに励み、体重は日本女子プロゴルフ協会ホームページに記載されている公称52キロから増量。「今、57キロですね。3食、しっかり食べています」と屈託なく笑う。

 高額なトラックマンと安価なポリタンク。両方を活用し、急成長が続く。「また、来週からトップを目指して頑張ります」。次週の富士フイルム・スタジオアリス女子オープン(9日~11日、兵庫・花屋敷GCよかわC)は縁起のいい大会でもある。「小学生の時、同じコースで行われたスタジオアリスのジュニア大会で2回優勝しています」と笑顔で話した。山下美夢有、19歳。トップに立つ日は近い。

 ◆山下 美夢有(やました・みゆう)2001年8月2日、大阪・寝屋川市生まれ。19歳。5歳からゴルフを始める。19年、関西女子アマ優勝、トヨタジュニアW杯では団体戦V。同年11月、大阪桐蔭高在籍中にプロテスト合格。20―21年シーズンからツアーに参戦。これまでの最高成績は昨年10月スタンレーレディスの5位。150センチ、57キロ。

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