目の病気を乗り越えた高山忠洋は予選落ち 特別保障制度によるシード権確保の条件クリアできず


決勝ラウンド進出が絶望的なる中、懸命にプレーする高山忠洋

決勝ラウンド進出が絶望的なる中、懸命にプレーする高山忠洋

◆男子プロゴルフツアー アジアパシフィック ダイヤモンドカップ 第2日(14日、神奈川・相模原GC東C=7298ヤード、パー72)

 113位と出遅れた高山忠洋(スターツ)は2バーディー、4ボギーの74とスコアを落とし、通算7オーバー。決勝ラウンド進出が絶望となり、公傷の特別保障制度によるシード権を手放すことになった。

 ツアー通算5勝の実力者、高山がアクシデントに襲われたのは、2018年7月の「長嶋茂雄招待セガサミーカップ」の練習日だった。

 「すべてのボールがディボット跡に埋まっているように見えた。でも、キャディーは『そんなことないでしょ』と。すぐに病院に行ったら、水がたまって、膜膜がはがれそうになっていると言われました」。正式な診断は「中心性漿液(しょうえき)性脈絡網膜症」。18年12月に名古屋大付属病院のスーパードクターによる手術を受けた。約1年のリハビリを経て、昨年8月に約2年ぶりにツアー復帰した。

 「復帰して、しばらくすべてが遠くに見えた」という高山は、コロナ禍で20年と21年が統合された今季は前々週まで6戦で4度の予選落ちと苦しんだ。しかし、前々週の中日クラウンズで3位と躍進。復活の手応えをつかんだ。前週のジャパンプレーヤーズチャンピオンシップ・サトウ食品では第3日終了時点で2位の好位置につけていたが、最終日に77と崩れ、34位に終わった。

 特別保障制度で公傷が適用され、今大会で約57万円を獲得すれば17季連続シードを獲得し、次週からもツアーに参戦できた。順位でいえば39位以内が必要だったが、予選落ちが決定的となり、シード選手としてのツアー出場権を失った。

 「実力不足です。全部において。その一言しかないです」と高山は潔く話した。

 和歌山の強豪、星林高で野球部に所属。甲子園出場の夢を果たせなかったが、「6番・一塁」で主力として活躍した。高校卒業後にプロゴルファーを志し、研修生に。抜群の運動能力を生かし、わずか3年後の1999年にツアー優先出場権を争う予選会で72位に入ってプロ転向した。2002年には初の賞金シードを獲得。クラブを始めて握ってから、わずか6年で、日本のトッププロの仲間入りを果たした。以来、ツアーのトッププレーヤーとして賞金シードを維持してきた。

 幸い、目の状態については「変な感覚はありません」と話す。今後は未定。「今後は試合に出られないので、どうすればいいか分からない。出られる試合があれば頑張るしかない」と高山は必死に前を向いた。

 ツアー屈指のナイスガイとして知られ、先輩にも後輩にも信望が厚い43歳は、厳しい現実を正面から受け止めた。

 「今週は最悪の状態で入ってしまった。初日は全力を出しても5オーバーでした。それが実力です。プロゴルファーなら調子がいい時は誰でも好スコアを出せる。調子が悪い時にどれだけ抑えられるかが、本物の実力だと思います。底力をもっと上げていきたい」

 高山はシード権は失ったが、プロゴルファーの誇りは失っていない。

最新のカテゴリー記事