稲見萌寧が銀! 日本ゴルフ界初の五輪メダル 「人生の中で一番名誉な、うれしいこと」


銀メダルを懸けたプレーオフを制し、リディア・コ(手前)と抱き合い健闘をたたえ合う稲見萌寧(カメラ・相川 和寛)

銀メダルを懸けたプレーオフを制し、リディア・コ(手前)と抱き合い健闘をたたえ合う稲見萌寧(カメラ・相川 和寛)

◆東京五輪 女子ゴルフ最終日(7日、埼玉・霞ケ関CC=7447ヤード、パー71)

 稲見萌寧(22)=都築電気=が通算16アンダーで並んだリディア・コ(ニュージーランド)とのプレーオフを1ホール目で制し、男女通じて日本ゴルフ界初のメダルとなる銀メダルを獲得。5打差3位で出て9バーディー、3ボギーの65をマークした。69で回った世界ランク1位のネリー・コルダ(米国)が17アンダーで初の金メダル。畑岡奈紗(22)=アビームコンサルティング=は10アンダーの9位だった。

 プレーオフ(PO)の1ホール目、銀メダルを争ったコのパーパットが外れると、稲見はキャディーの奥嶋誠昭コーチ(41)と静かに握手を交わし、すぐにコと健闘をたたえ合った。大会の73ホールを通じて一切、緊張した様子はなかった。男女を通じて日本ゴルフ界初の快挙となる五輪のメダルを手にし、22歳は「人生の中で一番名誉なうれしいこと。重大な任務を果たした感じがある」と平然と言った。

 5打差を追ってのスタートも体が思うように動かなかった。朝の練習場から右背中に違和感を抱え、「呼吸がしにくかった」。バーディー直後の2番、6番をボギーとし、前半を3打差5位で折り返した。ようやく後半にエンジンが掛かった。19年国内ツアーでパーオン率歴代1位の78・2079%を記録した持ち前のショットと「パターがかみ合った」。12番から圧巻の4連続バーディー。約1時間の中断後、17番でバーディーを決め、首位のN・コルダを捉えた。9バーディーは攻め抜いた証しだった。

 金メダルも見えたが、最終18番はボギーを叩いた。「がっかりしても次につながらない。プレーオフは勝率100%。やると決まった時は勝ちにいこうと思った」。ツアーで3戦3勝と無類の強さを誇るPOで難なくパーで上がり、元世界ランク1位で海外メジャー2勝のコを退けた。

 1日に男子で、銅メダルを懸けて7人で争ったPOに敗れ4位となった松山英樹から会場で「男子で取れなかったので女子でメダルを取ってほしい」と思いを託された。「18番で金メダルはなくなったけど、メダルを取れたことが一番うれしい」と、米女子ツアーの強豪相手にも臆することなく見事に応えた。

 3月のツアー初戦時に63位だった世界ランクを序盤の12戦で5勝を重ね、日本代表決定時の6月28日には27位まで上げて出場権をつかんだ。大会前から「コロナで1年延期になったからこそ五輪に出場できた」と語り、重圧とは無縁で臨んだ。この銀メダルで報奨金1000万円と5年シードを手にする。「子供たちに夢を与えることができた」。大舞台で最も難しいとされる平常心でのプレーを最後まで貫き、歴史に残る偉業を成し遂げた。(岩原 正幸)

 ◆萌寧に聞く

 ―戦いを終えて。

 「日の丸を背負いメダルを取れるのは本当にうれしい。好きな選手のリディア・コさんとのプレーオフは楽しかった」

 ―亡き祖父から授かった「忍耐」が座右の銘。

 「ここは決めなきゃという場面で自分にプレッシャーをかけている。今年は自分なりに頑張っているよ、と伝えたい」

 ―日本のゴルフ界に大きく貢献した。

 「日本開催で日本人がメダルを取れたことで、これからゴルフを始めたり、プロになりたいというジュニアの子が増えてくれたらうれしい」

 ―今後へ自信になる?

 「通用するというより、ドライバーの飛距離をもっと伸ばさないといけない。課題を見つけた」

 ―世界トップが出場した中で結果を残し、今後へ心境の変化は?

 「現状は(海外挑戦は)考えていない。日本でずっと頑張って永久シードを取りたい。(国内)メジャーで優勝したい」

 ―13日から日本ツアーに出場する。

 「明日から練習します」

 ◆キックボクシングトレで下半身強化

 キックボクシングトレを指導するパーソナルトレーナーの平野洋平さん(41)はテレビで稲見の快挙を見届け、「4日間ずっと見ていた。うれしかったです。本当におめでとう」と祝福した。

 今年1月、平野さんが経営する千葉市内のトレーニングジム「TRANSFORM」に稲見が訪れた。3月のツアー開幕前は週に5回、シーズン中も試合のない月曜の朝に3分間のキックを平均4セット行うなど約2時間のトレーニングで鍛えてきた。「下半身は強化できた。体重は61キロ以上、筋力も維持し、体の状態は安定している」と効果を明かした。

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