◆女子プロゴルフツアー アース・モンダミンカップ 最終日(26日、千葉・カメリアヒルズCC)
9位で出たプロ8年目の木村彩子(26)=富山常備薬=が通算4アンダー、6打差を大逆転してツアー初優勝を飾った。強風下でも4バーディー、1ボギーの69と伸ばして最後は歓喜の涙を流した。プロになる前、中古ゴルフショップの販売員として時給1000円のアルバイトを経験した苦労人が、今季ツアー最高の優勝賞金5400万円をつかんだ。西村優菜(21)=スターツ=と、ささきしょうこ(26)=日本触媒=が1打差2位。
木村がでっかい夢をつかんだ。最終組の3組前でプレーし、6打差をひっくり返して首位に浮上した約50分後。練習場でプレーオフに備える中、初優勝が決まった。「夢みたい。まさか自分が優勝できるなんて」。自然と涙があふれ、坂口悠菜キャディーと抱き合った。
強風下でも「つっこんでいこう」と終始、攻めた。前半に2つ伸ばし、圧巻だったのは11番。25ヤードのエッジから、ピッチングウェッジで転がしチップインバーディー。「大きかった」と流れをつかんだ。14番もバーディーとし、後続の首位・ささきがダブルボギーをたたいたことで、4日間で初めてトップに立った。ラウンド途中、マスカットを口にするが「吐きそう」と極度の緊張を味わいつつも、耐えて勝った。
ツアー最高の賞金5400万円のビッグマネーを手にした裏には苦労もあった。高校卒業後、14年のプロテストに不合格。失意で3か月ほどゴルフから離れた。その間、何もせず実家にいると母・美保さんに「欲しいものを買えるぐらい稼ぎなさい」と叱られた。中古用品店「ゴルフパートナー」で販売員のアルバイトを始めた。「ベストスコア67」と記した名札で接客し「8時間働いて8000円」と当時の時給を思い返した。
8年後、夢の金額を手にした。これで生涯獲得賞金は1億7005万217円に。年間獲得賞金も44位から5位に浮上した。26歳の愛車は現在、イタリアの高級車「マセラティ」だが、優勝会見で約2700万円するという「BMW M8」の購入も検討すると明かし、おどけた。
どん底から地道に重ねた努力もある。18年に初シードも、19年は「ショットが分からなくなった」とシードを喪失。同年末から、17、19年賞金女王の鈴木愛らを教える南秀樹コーチに本格的に指導を仰いだ。練習場のある高松市に一部屋借り、3月のシーズン開幕までオフもゴルフ漬け。アプローチを真っすぐ打つところから始め、悩みのショット改善につなげた。
身長は155センチと小柄だ。ツアーの平均飛距離も228・3ヤード。それでも「小さくても勝てると証明したい。たくさん勝てる選手になれれば」と力強く決意し、夢の続きを思い描いた。(宮下 京香)
◆木村 彩子(きむら・あやこ)1995年11月2日、大阪・枚方市生まれ。26歳。10歳の時、ゴルフを始め、2014年に千葉・聖徳大付女高を卒業。15年7月のプロテストに2度目の受験で合格。18年に賞金ランク43位で初の賞金シード。155センチ、50キロ。家族は両親。