蝉川泰果「どの『タイガ』にも負けない」…地元・兵庫で史上6人目アマVに涙 大会初アマ連覇も


4番、パーパットを決め、ギャラリーの拍手に応える蝉川泰果(カメラ・馬場 秀則)

4番、パーパットを決め、ギャラリーの拍手に応える蝉川泰果(カメラ・馬場 秀則)

◆男子プロゴルフツアー ▽パナソニックオープン 最終日(25日、兵庫・小野東洋GC=7113ヤード、パー72)

 3人が並ぶ首位から出たアマチュアの蝉川泰果(たいが、21)=東北福祉大4年=が8バーディー、2ボギーの66で回り、通算22アンダーで初優勝を飾った。73年のツアー制施行後、昨年大会の中島啓太以来となる史上6人目のアマチュアVを達成。アマによる同一大会2年連続優勝、レギュラー&ABEMAツアー同一年優勝はともに史上初で、地元・兵庫で記録ずくめの歓喜を迎えた。早ければ、11月のマイナビABC選手権(3~6日)でプロデビューの可能性も示唆した。

悲願&地元で涙 半年前と違う涙が、蝉川の瞳からあふれた。2差リードの18番グリーン。「パーパットを打つ前から我慢していた」。ボギー締めも関係ない。14歳のツアーデビューから18戦目の初V。兵庫県加東市出身で、地元の温かい拍手が包んだ。昨年、同じ偉業を果たした同学年の中島と抱擁し「追いつきたいという一心。僕が泣きすぎて(言葉は)何もなかった」。また涙がこぼれた。

 有言実行した。「勝つか負けるかで人生が変わる。克服しなければならない壁」。初の最終日最終組だった4月の関西オープンで17位と急降下。悔し泣きを思い出し、必勝を宣言して臨んだ。前半で首位陥落も「(6月に)ABEMAで優勝もして、場数を踏み精神的に落ち着いた」。13番から2、4、4、3・5、5メートルを決める圧巻の5連続バーディー。成長を証明した。

 1歳。アンパンマンのプラスチック製クラブから始まった。最初はつかまり立ちのつえ。転がし出した球が、数か月後には“強打”に。破損し泣きじゃくる息子に、父・佳明さん(61)は何度も買い直しに走った。この日、家族と見届けた父は「買い物にもライダーベルトをつけて、クラブを引いていた」と懐かしんだ。

 注目のプロ転向は明言を避けたが、同じ地元・兵庫開催のマイナビABC選手権が候補。まずは、常陸宮杯全日本大学ゴルフ(10月25~28日)で大学日本一を目指す。大学の先輩・杉原大河ら、男子ゴルフ界に「たいが」名は多い。タイガー・ウッズに憧れる男は「プロはエンターテインメント。どの『タイガ』にも負けないという気持ち」。頼もしい新鋭が、大きな一歩を刻んだ。

(宮崎 尚行)

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