◆報知新聞社主催 国内男子プロゴルフツアー 今季最終戦メジャー 日本シリーズJTカップ 最終日(4日、東京よみうりCC=7023ヤード、パー70)
史上7人目の大会3勝目を狙った石川遼(31)=カシオ=は、優勝に2打届かぬ通算10アンダーで5位だった。1イーグル、4バーディー、1ボギーで、この日のベストスコアに並ぶ65と猛チャージ。17番のイーグルで一時、首位に1打差に迫り、6打差11位からの大逆転Vが見えるなど、会場を沸かせた。10月にプロ転向した蝉川泰果(たいが、21)=東北福祉大4年=は、66の8アンダーで8位に浮上し、飛躍のシーズンを締めた。
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日本ツアーの全知全能が凝縮したような好試合だった。逃げる小平、出水田を追って蝉川、桂川らの若手が群がり追う1番から9番の展開はベテランのやる気を引き出し、44歳谷原、41歳岩田、大会2勝の石川へとパワーが伝播(でんぱ)。大詰め17、18番の“シリーズ名物”の王者争いは史上まれにみる大激戦だった。だが、優勝の行方を決めたのは上がり2ホールではない。
8番から11番の4ホールだ。マスターズを開催するオーガスタナショナルGCの11、12、13番を「アーメンコーナー」というが、今大会の「アーメンコーナー」は8、9、10、11番。なかでも9番はこの日5ボギー、10番は1ダブルボギー、4ボギー。日本のトップ30人が集う大会で、4日間を通じ最もスコアを崩しやすいホールとなっていた。
アマチュアで日本オープンに優勝。自信を持ってプロ入りした蝉川は「グリーンが傾斜していて難しく、スピンコントロールの重要性を痛感。アイアンとショートゲームをもっと磨かないといけない」と言った。シリーズ3勝目を逃した石川はさすがだった。9番を2日連続バーディー。「成功すれば良しとするゴルフから、ミスするリスクを最低限に抑えるゴルフへと転換を図っている」という。15歳から攻め続け、今31歳。“新しい石川”を目指す今大会だ。この難関をクリアした後、13、14番を連続バーディー。17番をイーグルとし、自信を深めた。
歴史は深い。こんな事実がある。井上誠一氏設計の東京よみうりCC。1964年の第2回大会、当時の公式戦優勝者5人だけで争った最高賞金大会には5000人の観衆が集まり大混乱。65年の第3回からアウト、インを入れ替え現行のパー3の18番を最終ホールとして使用し、現在に至っている。話題の若手を寄せつけない谷原の優勝に歴史を感じ、ゴルフの深さを見た。(ゴルフジャーナリスト・武藤一彦)