「ママさんゴルファー」をサポートする取り組みが、ワールドレディスサロンパスカップから始まった。選手からの声をもとに、一般社団法人日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)が住友商事と協力し、プレー中にJLPGA会員の子供を預かる託児所を開設した。
託児所に出向くと、4歳の男の子を持つ若林舞衣子(ヨネックス)ら2人が利用していた。安全を確保するため、マットを敷き詰めた床には風船やミニカー、ままごとグッズなどたくさんのおもちゃがあるのが目に入った。保育士の緒方道子さんによると、折り紙も人気だという。作品は“お土産”として持って帰ることができる。取材した日は、ちょうど5月5日の「こどもの日」。その小さな手でこいのぼりを折り、出来栄えに大喜びする子供たちの笑顔、楽しそうな声がとても印象的だった。
プロゴルファーもまた、育児と仕事の両立が難しい世界だ。女子プロゴルフのツアー大会は3月に開幕し、11月末まで毎週実施される。大会前の練習日などを含めると、1大会に5~7日間を要する。さらに北海道から沖縄まで津々浦々で開催されている。とにかくハードだ。
開設の背景には「ママさんプレーヤー」の増加がある。21年には、横峯さくら(エプソン)が第1子を出産。産後約3か月でツアーに復帰した。昨年には、有村智恵(フリー)が「妊活」で当面の休養を発表。時代背景も踏まえ、女子ゴルフ界全体で妊娠、出産、子育てサポートしようという動きが本格化した。
託児所を利用できるのは、0歳~小学校低学年。1歳未満は、乳児1人につき、保育士1人が対応する。昼寝時には、5分ごとに状態をチェックする。多い日には20人以上を預かるという緒方さんは「子供同士で遊んでいる姿も見られる」と子供たちの適応力に目を細める。託児所で子供たちの輪も広がる。
JLPGAの公式サイトに若林の感想が掲載されていた。
「託児所を利用したが、(プレー中に)どうしているのか、と心配もしていた。だけど、保育士さんが、親切にしてくださりとても楽しそう。ホールアウト後うかがったら、まだ帰りたくなさそうな表情だった」
「保育士さんがいらっしゃる理想な環境だった。また『これから子供を』と考えている選手や、若い選手にもいい取り組みではないか」と、今後への影響も口にした。
今後は、JLPGA会員以外にも、コーチやキャディーら大会に関わるスタッフも利用できるようにする方針だ。
98年度生まれの「黄金世代」、00年度生まれの「ミレニアム世代」、01年度生まれの「21世紀世代」。その下の02、03年度生まれにもツアー優勝者が続々と誕生している。若手の台頭が目立つ女子プロゴルフ界。この取り組みが、どの大会でも当たり前になれば「産後にツアー復帰」「ママでも優勝」を目標に活躍する選手も増えてくる。同性、同世代の筆者には、そんな未来が見えた気がする。(ゴルフ担当・富張 萌黄)