片岡尚之 7打差逆転涙の日本一 初マスターズへ「死ぬほど努力」 プレーオフ制す


優勝の瞬間、ガッツポーズして空を見上げる片岡(カメラ・中島 傑)

優勝の瞬間、ガッツポーズして空を見上げる片岡(カメラ・中島 傑)

◆男子プロゴルフツアー メジャー第3戦 日本オープン 最終日(19日、栃木・日光CC=7238ヤード、パー70)

 片岡尚之(27)=フリー=が7打差を大逆転し、涙のメジャー初制覇を飾った。6位から出て68と伸ばし、通算3アンダーで並んだ原敏之(さとし、34)=YAGOKORO=とのプレーオフを1ホール目で制し、2021年ジャパンプレーヤーズチャンピオンシップ・サトウ食品以来4年ぶりとなるツアー2勝目。2月に誕生した長男・波瑠くんにささげるパパ初優勝で、来年の海外メジャー、マスターズと全英オープンの出場資格を獲得した。

 冷たい雨に打たれながら、片岡の目から熱い涙が滴った。プレーオフ1ホール目。グリーン右ラフから寄せてパーをセーブし、勝利を決めた。「やっと勝てた。ここまで頑張ってきてよかった。全プロゴルファーが憧れる日本オープンに名前を刻めた」。優勝者に付与されるマスターズ切符もつかみ取った。「本当に夢だった。それがかなってすごくうれしい」。7打差の大逆転で、日本一の称号を手に入れた。

 16番で3メートル半、18番では7メートルのパーパットをねじ込み食らいついた。ホールアウトした時点で、3ホールを残していた清水大成と1打差の2位。「プレーオフはさすがにないだろう」。雨がすごかったため、練習もせずにクラブハウスにいた。清水の17番のダブルボギーを機に「気持ちを切り替えてスイッチを入れた」。

 試合がなかった前週、メジャー7勝の片山晋呉の元に足を運び、ショットとアプローチの助言をもらった。内容は「秘密」だが、「試しているうちに試合中にどんどん良くなった」。最終日前夜に届いた「楽しんできて。気持ち良くやってきて」とのエールに応えた。

 プロ4試合目で初優勝した。だが、今回の2勝目はそこから4年を要した。その間、2位が7回。勝ちきれない日々が続いた。「自他共に認めるシルバーコレクター。苦しかった。負け癖がついてしまっていた」。この日もプレーオフ前に「また2位かな」と不安が脳裏をよぎったが、気持ちを奮い立たせた。

 昨年結婚したさくらさん(24)との結婚記念日が20日。前祝いになった。2月に誕生した長男・波瑠くんにささげる4年ぶり2勝目は、多くのものをもたらした。「マスターズと全英オープン、その2試合に出る選手のなかで僕が一番下手だし技術もないし力もないと思う。死ぬほど努力をして、(来年)4月までに準備をして、なんとか戦えるように頑張りたい」。挑戦者として、初の海外メジャーの舞台に立つ。(高木 恵)

 ◆片岡 尚之(かたおか・なおゆき)1997年12月28日、北海道・江別市生まれ。2歳からゴルフを始める。札幌光星高2年時の2014年北海道アマを最年少記録で優勝。同年は日本ジュニアで北海道の選手として初優勝、日本アマでもベスト8。16年に東北福祉大に進学。4年時の19年にプロ宣言。パット巧者で平均パットは20―21年1位、22年2位、23年2位。特技はダーツで、プロテスト受験を考えたことがあるほど。171センチ、67キロ。

 ◆日本男子ツアーの最終日最大逆転劇 国内メジャー最高峰の日本オープンでは、2019年(福岡・古賀GC)チャン・キム(米国)の8打差が大会最多。1973年のツアー制施行後では、80年日本国土計画サマーズ(長野・ニュー蓼科CC)の船渡川育宏、83年ゴールドウィンカップ日米ゴルフ(兵庫・太平洋C六甲C)の中嶋常幸、2013年日本プロ日清カップヌードル杯(千葉・総武CC総武C)の金亨成(韓国)の9打差が最多記録。今季はこれまで、6月のハナ銀行招待のショーン・ノリス(南アフリカ)の4打差が最大の逆転だった。

 ◆マスターズの出場資格 26年大会は「歴代優勝者」など26項目。日本勢は21年大会覇者の松山英樹が「歴代優勝者」の資格で出場決定。顕著な成績を残した選手への「特別招待」や五輪金メダリスト枠もある。来年4月9日開幕のマスターズ前週までの米ツアーで優勝するか、世界ランク50位以内に入れば日本選手も出場権を得られる。ちなみに、片岡は前週12日付の世界ランクは500位だった。

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