「これをしなければ死んでしまう、という究極のプレッシャーには強いです」逆転で今年2勝目の稲見萌寧が強心臓を語る


逆転で今季3勝目を果たした稲見萌寧は、雨雲の下で万歳して喜んだ(カメラ・今西 淳)

逆転で今季3勝目を果たした稲見萌寧は、雨雲の下で万歳して喜んだ(カメラ・今西 淳)

◆女子プロゴルフツアーヤマハレディース葛城最終日(4日、静岡・葛城GC山名C=6564ヤード、パー72)

 3打差6位から出た稲見萌寧(21)=都築電気=が6バーディー、ボギーなしの66で回り、通算12アンダーで優勝した。第2日終了時点では24位にとどまっていたが、第3日、最終日と連続で66をマークし、大逆転。3週前の明治安田生命レディスに続き、今年2勝目。今季3勝目、通算4勝目を挙げた。

 初日から首位を走り続けた山下美夢有(19)は1打差2位で惜敗し、初優勝ならず。1988年ツアー制施行後、4日間競技の完全Vは2005年日本女子オープンで達成した宮里藍の20歳105日を超える史上初の10代での快挙を、あと一歩で逃した。

 2打差の3位は高橋彩華(22)=東芝=。3打差の4位は小祝さくら(22)=ニトリ=、高木優奈(22)=グランフィールズCC=、鶴岡果恋(21)=フリー=だった。

 プロゴルフの世界で最も大事なサンデーバックナイン(最終日の後半9ホール)で、稲見は5バーディー、ボギーなしの猛攻で勝利をもぎ取った。最終18番パー5。下りの5メートルのバーディーを見事にねじ込んだ。「触るだけの下りフックライン。いいイメージで打てました」。結果的にウィニングパットとなった一打を会心の笑みで振り返った。

 21歳の稲見は、ずば抜けた強いメンタルを持つ。

 「私、あまり、プレッシャーに強くありません。周りから『頑張ってね』というくらいの軽いプレッシャーには弱いですけど『これをしなければ死んでしまう』というような究極のプレッシャーには強いです。だから、たまに自分をメチャクチャに追い込みます」

 独特の表現で、独特の「精神論」を明かした。

 「18番のバーディーパットは『決めなければ勝てない』という気持ちで臨みました。『決めなければ死んでしまう』というほどまでは追い込んでいませんね」と笑顔で話す。

 この日は“封印”したが、かつて、ゴルフで「死んでしまう」というほど、追い込んだ経験を持つ。

 2018年7月27日。プロテスト最終日の18番。スライスライン、3メートルのバーディーパットを決めて、ぎりぎりの20位で合格した。「プロテストでは、決めなければ死んでしまう、と思ってプレーしていましたね」と振り返る。

 重圧が増すほどに力を発揮する。稲見はプロゴルファーに重要な資質を持っている。

 今年の5戦で、稲見と小祝が2勝ずつ。「2強時代」の様相を呈している。2人の縁は深い。19年7月、サマンサタバサレディースで小祝が初優勝。その翌週のセンチュリー21レディスで稲見が初優勝を果たした。今年も初戦のダイキンオーキッドで小祝が勝つと、翌週の明治安田生命レディスで勝利した。「さくらちゃんが勝つと、私も勝てる。験担ぎをしています」と、真面目な表情で話した。

 コロナ禍の影響で統合された2020―21年シーズン。現在、小祝が賞金ランク首位(1億881万4208円)。稲見は6位(6774万3216円)で追う。「今シーズンの目標は複数優勝でした。それを達成できたので、次はまだ勝ったことがないメジャーで優勝を目指して頑張ります」。今年最初のメジャーのワールドレディスサロンパスカップ(5月6~9日、茨城GC東C)などビッグゲームの制覇に意欲を示した。

 「黄金世代」と呼ばれる1998年度生まれの1学年下の1999年生まれ。「黄金世代」と真っ向から勝負できる力を持っていることを稲見は改めて証明した。

 ◆稲見 萌寧(いなみもね)

 ▼生まれ、サイズ 1999年7月29日、東京・豊島区生まれ。21歳。166センチ、62キロ。家族は両親。

 ▼ゴルフ歴 9歳から始める。18年のプロテストに一発合格。19年7月のセンチュリー21レディスでツアー史上15人目となる10代で初優勝。昨年10月のスタンレーレディスで2勝目。今年3月の明治安田生命レディスで3勝目。

 ▼学校 日本ウェルネススポーツ大に在学中。

 ▼ショットメーカー 19年はパーオン率78・2079%で歴代1位。

 ▼オフトレ キックボクシングを初導入し、瞬発力アップ。10~15ヤードの飛距離アップを目指し、一日4食で5キロの体重増。「会う人に『太ももが大きくなったね』と言われる。私には褒め言葉です」

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