
岩井千怜
◆米女子プロゴルフツアー リビエラマヤ・オープン最終日(25日、メキシコ・エル・カマレオンGC=6583ヤード、パー72)
岩井千怜(ちさと、22)=ホンダ=が、米ツアー本格参戦1年目で初優勝を飾った。2位から出て7バーディー、1ボギーの66と伸ばし、通算12アンダーで2位と6打差の圧勝。賞金37万5000ドル(約5340万円)を獲得した。今季は竹田麗央(22)=ヤマエグループHD=、西郷真央(23)=島津製作所=に続き、日本勢の同一シーズン3人目の優勝は史上初となった。米ツアー未勝利で双子の姉・明愛(あきえ、22)=ホンダ=も優勝すれば、米ツアー4組目の姉妹Vとなる。
優勝を決めた8秒後、岩井千がびしょぬれになった。姉・明愛らからシャンパンをかけられて祝福。ラッパ飲みした大瓶を右手で突き上げ「(シャンパンが)こんなに勢いがあるんだと思って」と笑顔がはじけた。米ツアーメンバーとして参戦8戦目の優勝は竹田に次ぐ歴代2位のスピードV。「こんな早く優勝できるとは思っていなかった。すごくうれしい」と酔いしれた。
1打差2位で出た1番で8メートルを沈めると、3番から鮮やかに4連続バーディー。パット数はこの日最少の25とさえ、今季ツアー最大に並ぶ6打差の圧勝。「アイム、ソー、ハッピー!」と英語で大喜び。表彰式では「チームの皆さん、家族…」と約30秒間、声を詰まらせて涙ぐんだ。コース近くの観光地・カンクンは、20年以上前に両親が新婚旅行で訪れた縁のある場所。父・雄士さん(52)は「うれしい。親孝行だね」と目を細めた。
最強ツインズは小2でともにゴルフを始め、高め合ってきた。22年に妹の千怜が先に国内初優勝から2週連続Vを飾れば、明愛も昨季まで2年間で6勝。昨年12月の米ツアー最終予選会でともに出場資格を獲得した。今季2度の2位に入った明愛とは対照的に千怜は11位が最高。姉が「努力家。気持ちが強い」と一目置く妹は「calm(落ち着く)」を合言葉に地道なプレーを重ね、実を結んだ。
今季は過去最多13人の日本選手が米ツアーに本格参戦。開幕12戦連続でトップ10入りと“なでしこ旋風”が吹き荒れる。3月の竹田、4月の西郷に続き岩井千と、史上初のシーズン3人目Vの快挙。米ツアー4組目の姉妹Vへ、妹は「明愛がネクスト・タイムに優勝します」と姉にハッパをかけた。
岩井千はメキシコから米国へ移動し、メジャー第2戦の全米女子オープン(29日開幕、米ウィスコンシン州エリンヒルズ)に出場する。「もっともっと2勝目、3勝目を目指して頑張ります」。国内に続き、初Vから2週連続優勝へ勢いを加速させる。
〇…岩井明は通算2アンダーの16位で終えた後、妹・千怜を18番グリーン付近で待ち構えて抱き合って喜んだ。今季は2月のホンダLPGA、4月のJMイーグルLA選手権と2度の2位。ともに1打差で初Vを逃しており「他の方が優勝しても刺激になるが千怜が優勝することは、より刺激を受ける。今年中の優勝を目指して頑張る」と強い決意を口にした。父・雄士さんも「明(愛)ちゃんに火が付いたでしょうね」と期待を寄せた。
◆岩井千の主な記録アラカルト
▽日本人2番目のスピードV 本格参戦8戦目での初優勝は歴代2位。
▽日本人年少6位 22歳10か月での米ツアー初優勝は日本人歴代6位となった。最年少は畑岡奈紗(18年)の19歳6か月。
▽同一シーズン日本人3選手によるV 3月の竹田、4月の西郷に続く日本人のツアーメンバー3人による優勝は初。12年の宮里藍と宮里美香、昨年の笹生、古江の2人が過去最多だった。
▽双子初&4組目の姉妹V 双子の姉・明愛(22)が勝てば米ツアー初の双子V。姉妹ではソレンスタム(スウェーデン)、ジュタヌガーン(タイ)、コルダ(米国)に続く4組目となる。
◆岩井 千怜(いわい・ちさと)2002年7月5日、埼玉・比企郡出身。22歳。埼玉栄高卒業後、武蔵丘短大在学中の21年6月、プロテストに一発合格。22年にツアー史上3人目の初優勝から2週連続V。25年3月の国内開幕戦・ダイキンオーキッドレディスで通算8勝目。今季から双子の姉・明愛(同6勝)とともに米ツアー本格参戦。162センチ。家族は両親と姉、弟。