
通算17アンダーで優勝し、トロフィーを手に笑顔の渡辺(カメラ・豊田 秀一)
◆女子プロゴルフツアー 大東建託・いい部屋ネットレディス 最終日(27日、福岡・ザ・クイーンズヒルGC=6503ヤード、パー72)
2打差7位から出た31歳の渡辺彩香(大東建託)が、ホステス大会で涙の逆転優勝を飾った。1イーグル、6バーディー、ボギーなしの64をマークし、通算17アンダーで、2022年ほけんの窓口レディース以来3年ぶりのツアー通算6勝目。一時は第一線を退くことも考えたツアー屈指の飛ばし屋は、このところ乱調気味だったドライバーを“封印”して勝負に徹し、恩返しの勝利を届けた。
最終18番。渡辺のガッツポーズが静寂を切り裂いた。2メートルを沈めて連続バーディー締め。後続に2打差をつけてホールアウトし、勝利を決定づけた。悲願だったホステス大会での優勝に、目が潤み、声は震えた。「いい時ばかりじゃなかったけど、いつも温かく応援してくれた。最高の形で恩返しができてうれしい」。契約10年目の大東建託の第10回記念大会で、トロフィーを掲げた。
6番パー5、残り210ヤードから5アイアンで2オンに成功。10メートル超をねじ込みイーグルを奪い逆転ロードを加速した。13番で10メートルを入れてスコアを伸ばし、15、16番では2メートル前後のパーパットをねじ込んだ。ラウンド中に森博貴キャディーに言った。「毎ホール、ガッツポーズが止まらんわ」。この日の全64打に、気迫を乗せた。
今季のフェアウェーキープ率は49・47%でツアー100位に低迷している。今大会も3日目までドライバーの不調に悩んだ。ツアー屈指の飛ばし屋は、「勝つために今はドライバーはいらない」と武器を“封印”した。最終日に手にしたのは3ホールだけ。「これでも勝てるんだっていうのを、自分に分からせてあげたかった」。3ウッドを多用し、勝負に徹した。
2014年の初優勝から11年をかけて積み上げた6勝目に、これまでの苦労が少し報われた気がした。「今までの5勝は自信満々で勝った5勝だったけど、今週は違った。自信はあんまりなかった。やるべきことを、今自分がやれることをやり続けるということが、自信につながっていくのかなって今日すごく思った。この1勝は今までの自分にはない勝ち方。これから生きてくると思う」と実感を込めた。
連日35度を超えた酷暑の中、31歳は初日から3日連続で、ホールアウト後に練習場に向かった。この大会にかける執念がそうさせた。シード落ちを喫し、進退に悩んだ2023年の冬、ツアー通算17勝の上田桃子さんに言われた。「『自分はもっとやれる』っていう気持ちがあるうちは、絶対に強くなれるよ」。その言葉は今も、渡辺の支えになっている。(高木 恵)