経済界に幅広い人脈を持つ松井功・日本プロゴルフ協会相談役(72)=スポーツ報知評論家=が、財界トップランナーにゴルフや経営について聞く「松井功のグリーン放談」。第6回のゲストは、スターツコーポレーション株式会社の村石久二代表取締役会長兼グループCEO(69)。24歳で銀行から独立して不動産業界に飛び込んだ村石会長は、“切る・捨てる”ではなく“拾う・救う”のヒューマニズムに富んだ“シニアトーナメントの父”でもあった。
松井「村石会長にはまだシニアの試合が少なかった頃から協力していただいて。TPCスターツシニアが始まったのが1989年。シニアの予選会を兼ねてましたね」
村石「私は母親、祖母に育てられましたから、スターツにはお年寄りとか女の人とか、手助けを必要とする人の力になりたいという基本的な考えがあるんですよ。後々に第一不動産カップを引き継いでレギュラーの主催をという話もあったんですが、やはりスターツは華やかな男子ツアーではなく、女子かシニアを応援しようということになったんです」
松井「そうでしたか」
村石「女子もご縁があったんですよ。郷ひろみさんと組んで開幕戦という話があって、後援競技で『郷・スターツレディス』というのを2度開催したんですが、最終的にはツアー開幕戦はダメということで諦めました」
松井「会長がシニアのプロを大事にして下さるのはなぜですか」
村石「それはやはり、みんな常識や礼儀をわきまえているからでしょう。私は育ちのせいか女性的な感性も持っているので、シニアや女の人のほうが安心。石川遼くんとプロアマで回ったときなんて、ここから狙うのって。アゲインストで280ヤードぐらいあるんですよ。もう怖くなっちゃう(笑い)。私は技術よりも」
松井「ホスピタリティ」
村石「そう。男子プロはプレーに一生懸命で、会話があまり弾まない。私ね、こんなこと言うと何だけど、ゴルフがあまりうまくないから、プレーよりも、いろんな人と会えるのが楽しい(笑い)」
松井「レギュラーツアーを盛り上げるには、何が必要なんでしょう」
村石「プロアマに行ってみたいという気持ちにさせないとダメじゃないですか。女子は宮里藍ちゃんがいなくても、次々に(スターが)出てくるし、ゲストに対しての教育もされている。池田勇太さんなんかは一生懸命。ああいう方が何人か出てくれば、レギュラーツアーも変わるんでしょうね」
松井「勇太のやろうとしていることを若いプロが理解できるかどうか」
村石「シニアと女子はいいですよ。きめ細やかなホスピタリティがある。確かに男子のほうが迫力あるし、醍醐(だいご)味もあるんでしょうけどね」
松井「プロアマに出たいような試合にしてくれって、いいですよ。この発言は」
松井「男子の所属では高山忠洋プロですね」
村石「丁度、スターツ笠間GCを買ったばかりで強い選手が欲しいと思ってる時に、プロアマで回ってみたら人柄も良くて。今年は、弊社がグアムに所有しているスターツグアムゴルフリゾートで2週間ぐらい、合宿してます。今年はやるぞと言ってました」
松井「女子プロでは櫻井有希、岡村咲、和田委世子に鎌田姉妹ですか」
村石「女子は決めるまで、お会いしたことないんですよ。ピタットハウスの(CM出演中の)水野真紀さんもそう。みんなから村石さんが選んでるんでしょうって言われるけど(笑い)」
松井「スターツ笠間以外のメンバーコースだと、小金井ですか」
村石「ハイ。異業種のオーナー経営者が集まる『だるまの会』というのがあって、懇意にさせていただいてるファンケルの池森さん、AOKIの青木さん、ドトールの鳥羽さん、カプコンの辻本さんとかがメンバーで、推薦されまして」
松井「ヨックモックの渡辺社長は」
村石「小金井入るときの面接プレーで一緒に回ってもらいました。ハンデは2か3で、プレーも言動も最高のジェントルマンですよ」
松井「スターツはスポーツ・文化協賛などの社会貢献活動に、とても積極的ですね」
村石「弊社は『総合生活文化企業』を掲げてますから、収益の一部を世の中にお返ししたいという思いは、早い時期からありました。うちは、一度に大きな収益を上げるデベロッパー型というより、管理業でコツコツと収益を積み上げる積層ビジネス的なことを実践してきましたから。おかげさまで創業45周年を迎え(年商)1500億円、経常利益で160億円までになることができ、協賛などの社会貢献活動も継続しています」
松井「会長ご自身もスポーツがお好きなんですね」
村石「はい。大好き。ホノルル・マラソンは50歳から7年連続出場。(最高は)3時間57分、サブ4達成しました」
松井「すごい!」
村石「1か月に200キロ走りましたよ。4か月間。1日7キロを(自分に)課して、1日休んだら翌日14キロ、また休んだら21キロ。30キロ走を1か月半で5回、やりました。ゴルフよりもよっぽど真剣(笑い)。マラソンやるとゴルフはドンドン上達します。ハーフを終えるとフラフラしてたのが、マラソンで足腰が鍛えられて、プロアマでは崖の下まで他の人のボールを探しに行きましたよ、練習代わりに(笑い)」
松井「僕も見習わないと(笑い)。その影響か陸上系の協賛も多いですが、東京マラソンのナンバーカード協賛は、すごい効果ですよね」
村石「名誉ですね。同業一社ですから。お陰様で少しずつ(会社を)知ってもらえるようになりました。自分がマラソンやっていたこともあり、いろいろな方とご縁ができて、東京で(シティーマラソンを)やるべきだと大勢の前でも訴えてきました。さまざまな方のご理解とご支援で、2007年の第1回大会から協賛させていただいていると感謝しています」
松井「ご自身が走ってたのが大きかった」
村石「はい。そう思います。そもそも、うちはコツコツ、マラソンのようにやるのが経営ポリシーなんですよ。陸上部も部員数だけは実業団NO1の規模になったみたいですよ」
松井「陸上部も抱える、男子のプロも抱える、女子プロも抱える。いっぱい、抱えてますね」
村石「あと、卓球。2007年から卓球日本代表チームのオフィシャルスポンサーと、昨年から中学生の伊藤美誠選手を応援してます。老若男女が楽しめるスポーツを長く応援したいので、等身大の範囲でお手伝いさせてもらっています」
松井「世界卓球も大成功だったようですね。報知も後援だったんでしょ?これ、書いとかないとね(笑い)」
松井「若い女性の就職人気がすごいですね」
村石「ある雑誌の人気企業ランキングで22位になりました。うちには女性が活躍できるフィールドがあります。待遇も男性と変わらない」
松井「結婚しても辞める人が少ない」
村石「管理業がメーンの会社で、物件がドンドン増えますから、経験を生かしてもらいたい。人材は人財なんです。今は更に海外拠点も30都市に広がってますから、なおさらです」
松井「どこの会社もリストラで人を切ろうとしている中、すごいですね」
村石「これからは労働力不足倒産がいっぱい、出ますよ。アルバイトを安い時給で抱えて利益をだしているところは特に厳しくなるでしょう。やはり一定水準の給与を出していく会社の構えがないと。僕は人間大好き。これだけは間違いない。知り合った人とは、別れたくないんです」
松井「本当に心優しいですね、会長は。ゴルフのスイングに出てる。やさしーく打つから(笑い)」
◆村石 久二(むらいし・ひさじ)1944年9月30日、長野県豊洲村(現・須坂市)生まれ。69歳。63年、県立須坂商卒業。同年、大和銀行(現・りそな銀行)入社。69年、大和銀行を退職し千曲不動産を創業。87年、スターツに改称。2000年、同社会長兼グループCEO。05年からスターツコーポレーション会長兼CEO。社外では全国住宅産業協会副会長も務める。
スターツは建築、不動産仲介・管理事業を中核とする国内34社、世界20か国30都市のネットワークを有するグループ企業。総合生活文化企業として金融、出版、ホテル、レジャー、高齢者支援などさまざまな分野で商品、サービスを展開している。またスポーツ・文化活動では東京マラソンを始め、全日本大学女子駅伝、千葉マリンマラソン、全日本卓球ナショナルチーム、スターツシニアゴルフトーナメント、スターツレディースゴルフ、新日本フィルハーモニーなどを支援している。
◆松井 功(まつい・いさお) 1941年11月2日、神戸市生まれ。72歳。富士ゼロックス専属。用具契約はキャロウェイ。18歳で林由郎プロに師事し、66年プロテストにトップ合格。翌年、プロデビュー。主な戦歴は72年静岡オープン2位、79年全日空札幌オープン4位、80年ミズノゴルフトーナメント6位など。91年よりシニアツアーに参戦。2002年、日本プロゴルフ協会理事就任、広報委員長を経て、05年会長に就任。2期務めた後、13年から相談役。一般財団法人日本プロゴルフ殿堂理事長、NPO法人日本ジュニアゴルファー育成協議会(JGC)理事長、阿山カンツリー倶楽部理事長。