【松井功のグリーン放談】TBS井上弘会長


マスターズのレジェンドを描いた絵の前でがっちりと握手を交わす井上弘・株式会社東京放送ホールディングス兼株式会社TBSテレビ代表取締役会長(右)と、松井功・日本プロゴルフ協会相談役

マスターズのレジェンドを描いた絵の前でがっちりと握手を交わす井上弘・株式会社東京放送ホールディングス兼株式会社TBSテレビ代表取締役会長(右)と、松井功・日本プロゴルフ協会相談役

 政財界に幅広い人脈を持つ松井功・日本プロゴルフ協会相談役(73)が、各界のトップランナーにゴルフや経営について聞く「松井功のグリーン放談」。

 第17回のゲストは、井上弘・株式会社東京放送ホールディングス兼株式会社TBSテレビ代表取締役会長(75)。民放連会長も務めるTBSのドンは、こよなくオーガスタナショナルと相模CCを愛するゴルフの虫だった。

 松井(以下松)「TBSのゴルフ中継と言えば、まずはマスターズですが」

 井上(以下井)「生中継を始めて、今年で40周年を迎えました。最初はVTRを持ち帰って、1週間遅れで放送していました」

 松「現地のTBSハウスでは、私もPGA会長時代にお世話になりました。日本の選手は皆、あそこでおいしい日本料理を頂いて、力になったと思いますよ」

 井「松井さんはよくご存じですが、マスターズの時期になると、オーガスタの周辺の皆さんは家をお貸しになって、どこかへ行ってしまう。私どもも最初は借りていたのですが、食事を作るとおみそ汁のにおいが残るらしく、次の年から貸してくれなくなるのです」

 松「オーナーさんが嫌がるようですね」

 井「毎年それで苦労をしたので、仕方なく購入して、あの時期だけに使っています」

 松「料理人も連れていく?」

 井「それと、あちらにいる日本人の方が総出で手伝ってくださって。おにぎりとかいろいろと作ってくれましてね。出場選手の方は毎日、スタッフと一緒に食事をなさっている時もありますね」

 松「オーガスタはとにかく美しい」

 井「芝を刈る方向も決まってます。グリーンからティーに向けて、必ず逆目になるように刈る。だからボールも転がらないし、テレビ映りもいいんですね」

 松「緑が濃く見えますからね。会長は何回くらい回られました?」

 井「あまり言いたくないですね(笑い)。いっぱい回りました。いつもヘタで」

 松「テレビで見るのと実際のコースは、高低差が違う」

 井「私はどうも10番がダメで…。18番のセカンドはすごい打ち上げ。私だったら2打目じゃないですけど(笑い)」

 松「映像は米CBSが撮っているのですか?」

 井「私どもも独自に撮っております。オーガスタは全部、地下ケーブルなのですよ。テレビタワーは一年中あるので、(カメラの)設定は楽らしいです」

 松「松山という楽しみな選手が出てきて」

 井「ぜひ、勝ってほしいですね」

 松「松山がメジャーで一番勝つチャンスがあるのは、マスターズでしょう。フェアウェーが広く、ラフがないから、彼の飛距離が生きるコースですね」

 井「あそこはドローがいいのですよね」

 松「私も富士ゼロックス元会長の小林陽太郎さんの代わりに一度回って、池に3発入れて80でした」

 井「さすがですね。私もゴルフ場はよく知っている。でも、腕が伴わない(笑い)」

 松「今はクローズなのですか?」

 井「ハイ。ただ、この時期はいろいろと(コース改造とか)考えるので忙しいそうです。ジョージア大学と共同で芝の研究もしておられますね」

 松「TBSは、世界陸上やボクシングなど、スポーツ中継にも力を入れてますね」

 井「陸上はこのところ、サニブラウンとか若い子が出てきてくれて面白いですよね。子供たちが関心を持ってくれるという意味では、我々TBSも少しはお役に立っているのかなと」

 松「ドラマはどうなんですか?」

 井「当たり外れが大きいですね。どの局もドラマが良くない。皆さん録画してご覧になりますでしょう? スポンサーの方が『録画すると、CMを飛ばすだろう?』とおっしゃって。あれにはちょっと困っています」

 松「でも、『天皇の料理番』とか、すごく評判が高かった」

 井「おかげさまであの作品は(視聴率が)非常に良かったのですよ。ですがご存じの通り、(1本のドラマの話数が)11、12本になってしまいましたからね。昔は1本当たると26本とか、場合によっては52本いってくれたのに。それだけ役者さんを拘束できないということもある」

 松「相模CCに行くときは電車で?」

 井「ハイ」

 松「相模の方は皆さん、一杯飲んで、電車で帰られる」

 井「私なんかはそういう“19番ホール”のほうが大事です(笑い)」

 松「私の兄(茂氏・株式会社松井商会会長)も相模のメンバーで、今は食堂委員長をやってます。メンバーのために、いろいろメニューを考えたりしているようです」

 井「お兄さんとは、(コースで)よくお会いしますよ」

 松「そもそもゴルフはいつ頃からお始めになったのですか?」

 井「30ちょっと過ぎくらいの頃、営業局の局長にすぐにやれと言われて。当時、この辺(TBS)には練習場がありまして」

 松「今は主に相模ですか?」

 井「はい。とてもいいゴルフ場なのですけれど、残念ながら私の腕にコースが合わない(笑い)。距離は短いので、お上手な方にはきっと物足りないでしょうが、フェアウェーを狭くしたり、いろいろ工夫してるんですよ」

 松「ベストスコアは?」

 井「若い頃に80いくつというのがあったと思いますが、今ではそんなのは夢のまた夢ですね。オーガスタコミッティーの親分に『ゴルフはやるのか』と聞かれたので、『道具もルールも同じだけど、僕のはゴルフに似た競技』というとウケましたね(笑い)」

 松「会長は赤坂サカスを始め、いろいろなことをおやりになられたアイデアマンですが、これからのTBSはどのようなことを?」

 井「一番大事なのは、ネットにどう対応するかですね。よく言うのですが、映画とテレビは同じように映像ソフトを作ってる。しかし、映画は最初に劇場で公開され、それを我々が買ってブラウン管に乗せていた。ところがネットは自由競争で、直接、テレビ画面に入ってくる。一方で我々は放送法で規制されているので、それは守らなければならない。自由競争で入ってくる人たちとどう太刀打ちするか。まあ、いろいろな実験をしてもらってはいますが」

 松「ネット社会の住人には規制がない。そこに、きちんとしたルールにのっとってあるレベルものを出し続けるテレビが勝負するのは、なかなか難しいですよね」

 井「特にキー局の責任は重いと思います。スポーツ中継などは続けていけると思うのですが、ダイジェストだけ見たいという人などにどう対応するか」

 松「難しい時代ですね」

 井「テレビは今、曲がり角にきています。技術はどんどん進んでいく。規制をしてくれという種類のものではないですから。防衛するには何らかの形で出ていってやるしかないですね」

 ◆井上 弘(いのうえ・ひろし)1940年1月5日生まれ。75歳。63年、東京大学文学部社会学科卒業、株式会社東京放送入社。93年取締役テレビ営業局長、95年取締役テレビ編成局長、96年常務取締役、97年専務取締役、2001年代表取締役副社長、02年同社長、09年株式会社東京放送ホールディングス兼株式会社TBSテレビ代表取締役会長。入社以来、主に営業畑、編成畑を歩む。12年から一般社団法人日本民間放送連盟会長。他に芸術祭執行委員会委員、日本オリンピック委員会評議員、ラグビーワールドカップ2019組織委員会評議員、放送番組国際交流センター評議員など。趣味は読書、旅行。

松井 功(まつい・いさお)
1941年11月2日、神戸市生まれ。72歳。富士ゼロックス専属。用具契約はキャロウェイ。18歳で林由郎プロに師事し、66年プロテストにトップ合格。翌年、プロデビュー。主な戦歴は72年静岡オープン2位、79年全日空札幌オープン4位、80年ミズノゴルフトーナメント6位など。91年よりシニアツアーに参戦。2002年、日本プロゴルフ協会理事就任、広報委員長を経て、05年会長に就任。2期務めた後、13年から相談役。一般財団法人日本プロゴルフ殿堂理事長、NPO法人日本ジュニアゴルファー育成協議会(JGC)理事長、阿山カンツリー倶楽部理事長。烏山城カントリークラブ会長。

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