伊澤利光と片山晋呉がマスターズ日本人歴代最高の4位 「誰も思わなかったでしょう」「最高の経験」


2009年大会で、日本人歴代最高位タイの4位につけた片山晋呉

2009年大会で、日本人歴代最高位タイの4位につけた片山晋呉

 男子ゴルフの2021年メジャー初戦、マスターズ(米ジョージア州オーガスタナショナルGC)は4月8日に開幕する。日本人の歴代最高成績は2001年大会の伊澤利光と09年大会の片山晋呉の4位となっている。

 伊澤は初出場した01年大会で快進撃を演じた。当時33歳は大会1か月前の世界ランクで48位となり、出場権を獲得した。「目標は来年の出場権(当時16位以内)を取ること」と3ウッドとウェッジをマスターズ仕様に新調して挑んだ。

 そして迎えた初日に、13番パー5で残り190ヤードからの第2打を5アイアンでピン右手前1・5メートルにつけて初イーグル。勢いに乗って1イーグル、3バーディー、4ボギーの71で回って1アンダーの6打差21位で発進した。

 第2ラウンドでは世界中の注目を集めた。この日のベストスコアで日本人の大会最少スコアとなる7バーディー、1ボギーの66をマーク。首位と3打差の通算7アンダーの4位に浮上した。飛距離を武器に2番、8番、13番、15番と4つのパー5全てでバーディーを奪取。中嶋常幸が1991年大会第3日にマークした67を上回る日本人最少スコアに「本当ですか? それはすいませんね」とTBSテレビの解説者として現地入りしている中嶋に謝り、マイペースぶりで周囲を笑わせた。

 「(4日間で)一番リラックスしていた」という最終日は、この日のベストスコア67をマーク。史上初のメジャー4連勝を飾ったタイガー・ウッズ(米国)と6打差の通算10アンダーで、日本人最高の4位となった。

 大会平均飛距離は286・4ヤードで全体7位。パー5のホールで4日間で最多の3イーグル、7バーディーを決め、目の肥えたパトロン(観客)を魅了した小さな飛ばし屋。169センチ、68キロながら、その美しく完成度の高いスイングは米ツアー通算62勝のアーノルド・パーマー(米国)に「キング・オブ・スイング」と言わしめたほど印象的だった。1973年の尾崎将司、1986年の中嶋常幸が記録した日本人選手最高位の8位を更新した。「こんな成績を残すとは誰も思わなかったでしょう。本人も思っていなかったんですから」と“伊澤節”でニコニコと笑い飛ばした。

 一方、2009年大会の片山晋呉はマスターズ5年連続8度目の出場だった。それまでは06年の27位が自己最高成績。36歳の日本ツアー賞金王はトレードマークのテンガロンハットをかぶり、マスターズカラーの緑のパンツに身を包んだ。初日は1番でピン手前7メートルを沈めてバーディー発進。3番でも手前5メートルのフックラインをねじ込んで伸ばした。名物「アーメンコーナー」の12番パー3では8アイアンで1メートルにつけてバーディー。13番パー5は2オンに成功し、伸ばした。15番も3打目を1メートルにつけるバーディーで単独首位に躍り出た。17番でボギーも、18番は左林から手前6メートルに乗せ、これを沈めてガッツポーズを4度繰り出した。

 18ホール中、16ホールでパーオンに成功。第1打でフェアウェーを外したのは18番だけで、ともに部門別ランク2位という抜群の安定感を見せた。大会自己最少の6バーディー、1ボギーの67。首位と2打差の5アンダーの4位と好発進を決めた。ラウンド後は公式会見場に呼ばれた。夢舞台で初の60台をマークし「こんなに幸せなことはない。最高の一日」と振り返った。

 第2ラウンドはめまぐるしく方向が変わる強風の中、171センチ、73キロの日本の賞金王は1バーディー、2ボギーの73と粘った。「コースに味方されている感じ。不安要素は無い」と首位と5打差の通算4アンダーの6位で決勝ラウンドへ進出した。

 第3ラウンドは5バーディー、3ボギーの70と伸ばして首位と5打差の6位をキープ。13番で6メートルをねじ込み、14番は残り180ヤードの6アイアンの第2打で、グリーンの傾斜を利用して30センチにつけるなど一気に3連続バーディー。ラウンド後、優勝者に与えられるグリーンジャケットのサイズを日本人で初めて大会中継局の米CBSテレビから尋ねられた。「マスターズの3日目にこんなに遅い時間までゴルフをやれることが幸せ。上(首位)は見てやらない。いつも通り。緊張よりも楽しみの方が大きい」とうなずいた。

 そして最終日は5バーディー、1ボギーの68。通算10アンダーで日本人歴代最高タイの4位に入った。終盤に圧巻のプレーでパトロン(観客)をわかせた。16番は「生涯最高の7アイアンのショット」と3・5メートルにつけてバーディー。18番はピン右4メートルからのバーディーパットを沈め、グリーンを取り囲む大観衆が一斉に立ち上がった。天高く両手を突き上げ、最高の笑顔がはじけた片山に、叫びにも似た歓声のシャワーが降り注いだ。

 優勝したアンヘル・カブレラ(アルゼンチン)とわずか2打差。「本当に最高の経験をさせてもらった。今まで悔しい思いをしてきたが、自分がやってきたことが花開いた」。大会4日間の平均飛距離は277・9ヤードで29位。フェアウェーキープ率は76・79%で16位。パーオン率は73・16%で5位。計118パットは33位だった。外国人記者からの問いかけに「日本では17歳の若い選手(石川遼)が出てきた。そして、ぼくがこういうことをやれば、日本のゴルフ界も盛り上がる」。当時日本ツアー通算26勝を挙げていた片山は、日本ツアーの看板選手としての誇りをにじませた。

 ◆日本男子の4大メジャーでの最高成績 マスターズは2001年の伊沢、09年の片山の4位。全米プロ選手権は1988年の中嶋常幸の3位。全米オープンは1980年の青木功、2017年の松山英樹の2位。全英オープンは1982年の倉本昌弘の4位が最高となっている。

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