◆米女子プロゴルフツアー メジャー第2戦 全米女子オープン最終日(6日、米カリフォルニア州オリンピックC=6362ヤード、パー71)
1打差2位で出た笹生優花(19)=ICTSI=が3バーディー、1ボギー、2ダブルボギーの73で回り、通算4アンダーで並んだ畑岡奈紗(22)=アビームコンサルティング=とのプレーオフ(PO)を3ホール目で制し、逆転で初優勝した。1977年全米女子プロの樋口久子、2019年AIG全英女子オープンの渋野日向子に次ぐ日本女子3人目のメジャー制覇。19歳351日で大会最年少優勝記録を2日更新。米ツアー出場資格を獲得し、参戦も発表された。
4月のメジャー初戦、ANAインスピレーションはタイの21歳、タバタナキットの完全優勝だった。今回は笹生、畑岡の日本勢が上位を独占した。19歳と22歳、アジアの若さの爆発に世界は驚いたことだろう。
背景に女子ゴルフ界の若年化という現実がある。世界最高峰の全米女子オープンで米国勢は5年連続タイトルなし。この日のトンプソンの信じられない乱調は「勝たねばならない」という重圧とは無関係でないだろう。長らく王朝を築く韓国勢の失速。今大会は高真栄、朴仁妃の7位が最高。女子ゴルフ界何かが変わり始めた。
1987年、岡本綾子が米ツアーで4勝を挙げてツアー初の外国人初賞金王に座った。だが岡本の中では「満足感はなかった」という。同年の全米女子オープン最終日に、3アンダーでジョアン・カーナー(米国)、ローラ・デービース(英国)と首位に並んだ。翌月曜日18ホールのプレーオフはデービース71、岡本73、カーナー74で“大魚”を逃した。「力及ばず? いえ、努力の足りなさにつきます」と今も悔いる。デービースは前年プロ転向、今回の笹生と同じ米ツアーのノンメンバーでの出場。当時24歳は驚異的な若い新人だった。
これに似た例は2010年の宮里藍だ。誰よりも多い5勝を挙げて世界ランク1位も経験。アジアのけん引役になったが、メジャータイトルには手が届かなかった。藍はアニカ・ソレンスタムと同じスウェーデンの名コーチ、ピア・ニールセン門下。アニカは「藍の強さはグリーンを捉えてからパットを入れる確率が誰よりも高いこと。アイアンとパットを磨けば自信は自然と芽生え強くなるのがゴルフだ」と明快に指摘した。
笹生、畑岡。そして今大会11人が出場した日本は国内に稲見萌寧、古江彩佳らが控え、層の厚さが際立っている。目指す方向、目指す技術がアジアの大きな流れの中で間違っていなかった日本。さらに期待していい兆候だ。(ゴルフジャーナリスト・武藤一彦)