◆東京五輪 女子ゴルフ3日目 (6日、埼玉・霞ケ関CC=7447ヤード、パー71)
6位で出た日本ツアー7勝の稲見萌寧(22)=都築電気=が5バーディー、2ボギーの68で通算10アンダーに伸ばし、首位と5打差の3位に浮上した。日米通算9勝の畑岡奈紗(22)=アビームコンサルティング=は11位で出て6バーディー、2ボギーの67で8アンダー7位。五輪ゴルフ日本勢初のメダル獲得と、ダブル表彰台へ望みをつないだ。ネリー・コルダ(米国)が15アンダーで単独首位をキープ。
懸命に上位を追いかけた。畑岡は1番第1打を右に曲げて3日連続でボギーが先行。「この3日間、正直、自分の思うようなゴルフができていない」。ピンを突き刺す持ち前のショットはあまり見られないが、総合力で67にまとめ、メダル圏内とは2打差に詰め寄った。「伸ばしていかなきゃいけない状況は変わらない。1個でも多く(バーディーを)とっていかなきゃ」。屈辱の舞台での猛チャージを誓った。
高1の夏、同じ霞ケ関CC東Cで行われた14年の日本ジュニア選手権。6打差首位で出た最終日に75と崩れ、同学年で既にツアー優勝していた勝みなみに大逆転負けした。父・仁一さんは「奈紗があんなに泣いたのを初めて見た」と証言。あの悔しさを、忘れたことはない。
男子で五輪4位の松山英樹の原点が、マスターズ切符獲得につながった10年アジア・アマチュア選手権(霞ケ関CC)優勝なら、畑岡の原点もここ。負けん気に火がつくと、周囲が「雨が降っても気づかない」と心配するほど練習に明け暮れた。16年にアマチュアで日本女子オープンを初制覇し、プロ転向。17年から米ツアーに挑戦し、5年目で4勝。98年度生まれの「黄金世代」だけでなく、日本女子ゴルフ界のトップに上り詰めた。
会場ではコース改修から2年後の19年、女子日本代表候補として真っ先に練習ラウンドを行うなど、メダル獲得に備えた。年初のインタビューで五輪に向け「ゴルフをあまり知らない人にも、こういうスポーツもあるんだと知ってもらえたら、うれしい」と決意を語っていた。7年前の涙を歓喜に変えられるか。(ゴルフ担当・岩原 正幸)
稲見と畑岡の「メダリスト」争い。過去にも見たことがある。15年6月の日本女子アマチュア選手権。15歳の定時制高校1年生だった稲見が67、69で8アンダーの単独首位で予選2日間を突破。上位32人によるマッチプレー方式の決勝トーナメントに進出した。記念のメダルとともに「メダリスト」の称号を獲得。高校2年の畑岡は惜しくも2打差2位だった。
稲見を取材したのはこの大会が初めて。写真をお願いするとジャケットを羽織り、笑顔を向けてくれた。「一日10時間練習します。人の何倍も練習しないと上にいけないので」「ゴルフ以外には興味がない」。15歳とは思えぬ落ち着きに驚いた。名前とともに強く印象に残った。「東京五輪は絶好の時期だから出てみたいですね」―。あれから6年。舞台のレベルは違うが不変の練習量と落ち着きで世界の「メダリスト」になろうとしている。(ゴルフ担当・榎本 友一)