渋野日向子がPO即イーグルで国内6勝目!「ハラハラドキドキ。面白い勝ち方ができてうれしい」と自画自賛


優勝トロフィーを手にする渋野日向子

優勝トロフィーを手にする渋野日向子

◆女子プロゴルフツアー 樋口久子・三菱電機レディス 最終日(31日、埼玉・武蔵丘GC=6650ヤード、パー72)

 渋野日向子(22)=サントリー=が、ペ・ソンウ(韓国)とのプレーオフ(PO)を制して国内通算6勝目を挙げた。2差リードのぺを最終18番でとらえ、POの1ホール目を会心のイーグルで制して決着。有観客での優勝は19年11月以来で、拍手喝さいの“しぶこ劇場”を見せつけた。国内ツアーでも難コースとなった今大会を制し、前週の予選落ちの屈辱を吹き飛ばす“スマイル・シンデレラ”が復活。米ツアーの来季出場権をかけた最終予選会(12月2日開幕・米アラバマ州)に大きな弾みをつけた。

 土壇場で追いついた渋野に勢いはあった。首位のぺと2打差。2年前に初優勝を決めた大会でマッチレースを演じ、3週前にもプレーオフを戦った因縁のペと、またも火花を散らした。

 「気合で、もうイーグルを狙うしかない」。残り199ヤードから7ウッドを力の限り振り抜いた。曇天を切り裂き、ピン右7メートルへ2オン。イーグルを逃すバーディーとなったが、ぺが1・5メートルのパットを外しボギー。勝負はPOに持ちこされた。

 「一球入魂」。2戦2勝と相性の良いPOを前に自分に言い聞かせて集中した。振り抜いた2打目は「もう一生打てない」という会心の一発だ。残り約220ヤードから3ウッドでピン左下3メートルへ豪快に2オン。イーグルで決着をつけると、万雷の拍手の中、満面の笑みを浮かべて右拳を突き上げた。

 観客の前での優勝は実に2年ぶり。手に汗握る逆転ドラマを「ハラハラドキドキするようなゴルフだったと思う。面白い勝ち方ができてうれしい」と自画自賛し、観客にスマイル全開だ。「これだけ落ちぶれても、応援してくださる方々がたくさんいたからこそ、今の自分には負けたくないと思っていた。最後まであきらめずにできました」。前週の予選落ちと苦しむ中、出身の岡山県から駆けつけた母・伸子さん(53)の顔を見ると「あの頃とは違う自分を見てもらえたかな」と、照れ笑いになった。

 プロゴルファーとは何か? 今年6月に有観客で開催されたメジャー、全米女子プロ選手権でプロの本質を振り返る場面があった。第2R終盤2ホールでバーディー、イーグルを奪い予選を通過。日本人ギャラリーから「見ていて面白いゴルフをしてくれてありがとう」と言われ、心が震えた。19年AIG全英女子オープン制覇で一世風靡(ふうび)した“スマイル・シンデレラ”の原点回帰。「面白いゴルファーになりたいと思った」。自分らしさを思い出した。

 昨年は予選落ちで「ズタボロにされた」という会場で今季2勝目。改造に取り組むスイングは「50点」と辛口ながら難コースに対応するまで戻ってきた。パーオン率も全体2位の79・62%。「何よりパーオン率が高い人が強い。私は今、そこを追求しています」

 11月の最終戦のメジャー、JLPGAツアー選手権リコー杯(報知新聞社後援)は欠場し、米ツアー最終予選会に挑む。「米ツアーに向けてすごく自信になる。通過が目標。良い状態で臨みたい」と渋野。本来の自分らしさを取り戻し、再び世界の頂点への道のりを歩む。(榎本 友一)

 ◆米女子ツアーの最終予選会(QT、現在はQスクール)12月2~5日、9~12日に米アラバマ州の2コースで開催され、計8ラウンドと長丁場の戦い。日本からは渋野と古江彩佳(21)が出場する。45位以上が来季レギュラーツアーの出場権を得られ、通過順で優先順位が決まる。米ツアー5勝の畑岡も16、17年にQTを経験した。昨年はコロナ禍で中止となっていた。

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