伸びしろを信じ努力を重ねる金田久美子 プロ17年目でも「もっとうまくなりたい」


金田久美子

金田久美子

◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 一昨年からゴルフの取材現場に戻った。若返りを続け、顔ぶれががらりと変わった国内女子ツアー会場。意外ともいえる人物が、今も勝負の世界に身を置いていることがうれしかった。8月に36歳の誕生日を迎える金田久美子だ。

 出会いは強烈だった。翌年にプロデビューを控えた2008年12月、名古屋まで取材に行った。練習場での撮影が済み、ランチを食べながらのインタビューへ。金田の父と3人で車に乗り込んだ。父が娘に聞いた。「くみ、どこがいい?」。「コメダ」。「〇〇はどうや?」。「コメダ」

 20分の車中で発した言葉は「コメダ」のみ。コメダ珈琲がよっぽど好きなのか、ただ不機嫌なのか。後部座席で震えながらたどり着いた「コメダ」で答えを知った。人見知りなだけの、優しい女性だった。反抗期の裏話、ゴルフの世界に導いてくれた父への愛。包み隠さず語った。

 「天才少女」と呼ばれたキンクミの負けん気は人一倍。プロ17年目の今も全盛だ。「アマチュアの頃はプロになったらすぐに勝てると思っていたし、もっと上手な自分を想像していた。今は何でこんなに下手なの?って毎年思っている」。オフの度に過去一番の練習量で追い込み「今年こそは」とシーズンを迎えてきた。

 22年に挙げた11年ぶりの2勝目を最後に、勝利から遠ざかっている。「もっとできるはずって思ってしまう。下手を認めた時に辞めようと思えるんだろうけど、まだ認められない。もっとうまくなりたい」。そう言い残し、笑顔で向かった先は炎天下の練習場。伸びしろを信じ、努力を重ねる姿は美しかった。

 ◆高木 恵(たかぎ・めぐみ) 1998年入社。ゴルフ担当と、4度の五輪取材(リオ、平昌、東京、北京)を経て、2022年に編集委員。

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