松山英樹よ、全米プロ攻略は「フェアウェーキープ」…コースを知り尽くした井戸木鴻樹が断言


優勝した翌年(14年)、全米プロシニアのチャンピオンズディナーで記念撮影する井戸木鴻樹

 【セントルイス(米ミズーリ州)6日=岩原正幸】米男子ゴルフのメジャー最終戦、全米プロ選手権は9日から4日間、当地のベルリーブCC(7316ヤード、パー70)で行われる。当コースで開催された2013年全米プロシニア選手権で日本男子初のメジャー制覇を達成した井戸木鴻樹(56)=小野東洋GC=が、松山英樹(26)=LEXUS=の優勝には「フェアウェーキープ」が重要だと説いた。小平智(28)=Admiral=はクラブ到着が遅れるハプニングに見舞われた。

 ベルリーブCCを知り尽くした男は、柔和な表情で当時を振り返った。2013年5月26日、50歳以上で争う米シニアメジャーの最終日。51歳の井戸木は5打差5位から、「目の前の相手を負かそうとプレーしたら全部に勝った」と驚く65で、奇跡の大逆転V。自称「日本でも大したことない選手」はいかにして勝ったのか。

 国内レギュラーツアーで01年から9年間で5度、フェアウェーキープ率1位を誇った正確性が武器だった。平均飛距離が255ヤードしかないハンデを補うため、セッティングはウッド6本。“六本木の男”は第1打を曲げないことを、優勝争いの条件に挙げた。

 「ラフに入れたら“半ペナルティー”と思え。縦の距離を合わせるのが難しい。とにかくフェアウェーに置かないと勝負にならん。一緒に回った選手は苦労しとった」。3日目に同組だったトム・ワトソン(米国、レギュラーメジャー8勝)は、井戸木より第1打を約40ヤード遠くに飛ばしながら、ラフに入れるとパーを取るのがやっとだった。

 警戒ホールは213ヤードの6番パー3。グリーンの右手前に大きな池が配置され、ティーショット時に恐怖心があるという。グリーンの形状も横に長く、丸型ではなく狙いづらい。「ピンが手前だと池が気になる。左のバンカーに入れて(クラブが)強く入ったら大けがをする」。グリーン奥にもバンカーがあり、ここをパーでしのぐことが重要だとした。

 井戸木は4日間で全選手最少の108パット(平均1・5)。グリーンは起伏が大きく、ピン位置も「端しか切らん」と警鐘を鳴らし、「逃げてばかりでは上位に行けない。怖いけど攻めていかないと。“肝試し”みたいなもんや」と、口調を強めた。

「心を強く持て」 13年8月の全米プロに松山とともに初出場(予選落ち、松山は19位)。プレー時間が午前と午後に分かれており会話は交わさなかったが、松山はその後16年4位、17年5位と日本のエースに成長した。今季のフェアウェーキープ率は60・93%で101位と苦戦しているが、「心・技・体、全て申し分ない。強いて言えば、心をどこまで強く持てるか。パットが入り出したら勝つチャンスはある」と、偉業に期待を寄せた。

 ◆井戸木 鴻樹(いどき・こうき)1961年11月2日、大阪・茨木市生まれ。56歳。中学卒業後、箕面GCでキャディーなどを務めながら腕を磨き、82年12月に4回目の挑戦でプロテスト合格。90年関西プロで初優勝。93年に2勝目。正確なショットを武器に、レギュラーツアーの賞金シードを15度獲得。シニアデビューした2012年、富士フイルム選手権で初優勝。167センチ、62キロ。

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