笹生優花、21世紀世代初V…まるでウッズ、レコード63ぶっちぎり


ツアー初優勝の年少ランキング

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 ◆女子プロゴルフツアー NEC軽井沢72 最終日(16日、長野・軽井沢72G北C=6710ヤード、パー72)

 1打差3位から出た新人の笹生優花(19)=ICTSI=が1イーグル、7バーディーでコースレコードに並ぶ63をマークし、通算16アンダーで2位に4打差をつけて初勝利した。1988年のツアー制施行後、21世紀生まれの選手の優勝は初。日本とフィリピンの二重国籍で、来夏の東京五輪はフィリピン代表で出場を目指し、将来は日本国籍を取得する意向。国内男子最多94勝の師匠・尾崎将司(73)も祝福のコメントを寄せた。

 19歳とは思えぬ規格外のゴルフだった。バーディーを7つ奪い迎えた16番パー5。笹生は残り195ヤードから6アイアンを振り抜き2メートルにピタリ。イーグルを奪うと右手で小さくガッツポーズを作った。コースレコードに並ぶ63。逆転で後続を4打離すぶっちぎりの初優勝劇を演じた。

 プロデビュー後、日米通算4戦目(米2戦)の新人は「まだ実感がない。緊張したけどキャディーさんと話してプレーに集中できた」と、涙はなく晴れやかに言った。19歳57日の初優勝はツアー史上7位の年少記録。同組で2位に入った藤田は「ずば抜けている。タイガー・ウッズと回っているよう。早く米国に行った方がいい」と絶賛した。笹生の最終日のウェアは、偶然にも赤シャツ、黒パンツでウッズの勝負服と同じだった。

 今後の目標を問われると「日本人の心を持って頑張りたい」と明かした。日本人の父とフィリピン人の母を持ち、5歳から4年間日本で暮らした。「来た頃は言葉(日本語)がよく分からず、私がゴルフの練習をすると一緒についてきた」と父・正和さん(62)。8歳でフィリピンに戻ると、プロを目指す練習を始めた。「柔らかくバネのある筋肉を作る」という父の指導で、当初70ヤードだったドライバーの飛距離は年々30~50ヤード伸び、現在の平均飛距離は260ヤードとなった。

 昨秋、米ツアー予選会は失敗したが、11月の国内プロテストに合格すると日本に拠点を置き、ジャンボ軍団に入門した。師匠の尾崎から「パワーとスピードを兼ね備えた体を作り上げた本人の努力以外になし。米国でトップになりたいと意識をしていたが、見えてきた。まずは1勝、良かった」と祝福の談話が届き、会見で聞くと「ありがたい、すごくうれしい」と感謝した。

 世界ランク221位はフィリピン勢トップ。現在、二重国籍を有し、来夏の東京五輪は出場圏内であるフィリピン代表での出場を望む。その後について「国籍を選ぶ時は日本」と語り、米ツアーで「世界一」が目標だ。「今日1勝できただけ。自分の持っている以上に頑張りたい」。21世紀生まれ初優勝の快挙は、今後の物語の通過点にする。(岩原 正幸)

 ◆笹生 優花(さそう・ゆうか)2001年6月20日、フィリピン生まれ。19歳。8歳で本格的にゴルフを始める。18年アジア大会は同国代表で金メダル。19年オーガスタ女子アマ3位。東京・代々木高在学時、昨秋のプロテストに合格。ドライバーの平均飛距離は260ヤード。憧れの選手はロリー・マキロイ(英国)。日本語、英語、タガログ語が堪能で韓国語、タイ語も少し話せる。家族は両親、弟2人、妹2人。166センチ、63キロ。

 ◆女子ゴルフの東京五輪への道 2021年6月28日時点の世界ランクを基準に算定する五輪ポイント上位60人が出場権を得る。〈1〉15位以内は各国・地域で最大4人〈2〉16位以下は〈1〉の有資格者を含み最大2人が出られる。本大会は同年8月4日から4日間、埼玉・霞ケ関CC東Cで72ホールストロークプレーの個人戦で競う。笹生は10日付の世界ランクで、フィリピン勢1番手の221位につけている。

 ◆二重国籍 法務省によると、日本と外国の国籍を有する人(重国籍者)は、一定の期限までにいずれかの国籍を選択する必要があると国籍法で定められている。期限までに選択しない場合には、日本の国籍を失うこともある。「昭和60年(1985年)1月1日以後に重国籍」となった日本国民で、「20歳に達する以前に重国籍となった場合」は「22歳に達するまで」が選択期限とされている。父がハイチ人のテニスの全豪オープン女王・大坂なおみ(22)は昨年10月、22歳の誕生日を前に日本国籍を選択している。

 ◆優花に聞く

 ―初戦のアース・モンダミンカップ(5位)後、成長したところは?

 「期間が空いたので試合勘がなく、一から練習する形でした。前回は2日目にスコアを落としたけど、今回は落とさなかったので経験が生きた」

 ―優勝を意識したのは?

 「18番です。最後のパットがカップを一周して入ったので良かった」

 ―飛距離は「ハンデ7」の父の影響なのか?

 「お父さんも飛ぶんですけど、球筋が違います。(父は)トレーニングや練習メニューを作ってくれました」

 ―笹生選手から見て師匠・ジャンボさんは。

 「静かな方なので、ワンポイント、ワンポイント教えてくれる。ジャンボさんを知ったのは去年初めてで。見た目は怖いですけど…」

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