![通算11アンダーで優勝し、両手を突き上げる金谷拓実](https://golf.hochi.co.jp/wp-content/uploads/2021/04/20210418-OHT1I51023-L.jpg)
通算11アンダーで優勝し、両手を突き上げる金谷拓実
◆日本男子プロゴルフツアー ▽東建ホームメイトカップ 最終日(18日、三重・東建多度CC名古屋C=7081ヤード、パー71)
元世界アマチュアランク1位のルーキー・金谷拓実(22)=フリー=が通算11アンダーでツアー3勝目を挙げた。賞金ランク1位に初めて立ち、世界ランクも東京五輪代表圏内の日本勢2番手に初浮上する見込み。東北福祉大の先輩でマスターズ王者・松山英樹(29)から今大会中に電話で「五輪に一緒に出ようぜ」とエールを送られた。大舞台での“競演”が現実味を帯びてきた。
新人とは思えぬ、堂々の“有言実行劇”だった。金谷は表彰式後、マスターズをアジア人で初めて制した松山のように、晴れやかな笑顔で力強く両腕を天高く突き上げた。
メジャー王者の大先輩からのゲキに、最高の結果で応えた。「今年は東京五輪代表に選ばれたいので、たくさん優勝したい。とにかく出る試合は全部勝つつもりです」と今大会前から宣言。さらに16日の第2R後、どうしても勝ちたい理由が加わった。単独首位でホールアウト後、松山と電話した。「マスターズ優勝を見て感動して」と泣いた話などを直接伝えると、先輩から「五輪は一緒に出ようぜ」と最高のエールを送られて発奮。約束を果たすべく21年初戦をVで飾った。
出場選手にコロナ感染者が出て第3Rは中止となった。この日の開催も危ぶまれたが「必ずやると思って、後悔のないように準備をした」と前日は打撃練習場に行き、強風の中でのゲームプランを練った。風速13メートルの風の中、フェアウェーキープ率は1位の78・57%。3つのパー5全てでバーディーを奪って勝ち切った。「開幕戦から優勝目指してプレーしていたので、結果に結びついて非常にうれしいです」。ツアー関係者によると、今後の世界ランクは75位前後まで上昇する見込みで、日本勢2番手となる可能性もあるという。
一度も首位に並ばれることはなかった。強風で多くの選手がスコアを落とす中、7番の2メートルのパットなどツアー1位の平均パット(1・7382)を誇るグリーン上を軸にパーを並べた。パー5の4番で3打目をベタピンに寄せてバーディー先行。1つスコアを伸ばして後続に3差と広げた。後半も冷静にパープレーにまとめて強さを印象づけた。
昨年10月のプロ転向後5戦目で2勝。新人では13年の松山に並ぶ超ハイペースだ。今大会は54ホール決戦のため、金谷は75%の優勝賞金1950万円を加算し、賞金ランク1位にも初めて躍り出た。13年の松山以来となるルーキー賞金王の可能性も膨らんだ。「松山さんが新人で取ったことはもちろん、知っています。自分も今年取れたら良いなと思う」と、1973年のツアー制施行後、2人目の“後継者”にも名乗りを上げた。スーパールーキーが、憧れのマスターズ王者とともに日本男子ゴルフ界を盛り上げる。(榎本 友一)
◆金谷 拓実(かなや・たくみ)1998年5月23日、広島・呉市生まれ。22歳。5歳でゴルフを始め、広島国際学院高2年の日本アマ選手権で17歳51日の大会最年少V。東北福祉大では18年アジア・パシフィック選手権優勝。172センチ、73キロ。家族は両親と兄。
◆金谷の優勝用具
▽1W=G410+(ロフト角9度、45・25インチ、硬さS)▽3W=G410LST▽3UT(19度)=G410▽5I=G710▽5~9I、PW=i210▽ウェッジ(52、58、60度)=グライドフォージド▽パター=シグマ2 ARNA▽ボール=ブリヂストンツアーB X(ボール以外はPINGゴルフ社製)
◆金谷に期待される記録
▽日本男子ツアーの新人の最多優勝(1973年のツアー制施行後) 最多は4勝で1981年の倉本昌弘(日本国土計画サマーズ、中国オープン選手権競技、全日空オープン、東海クラシック)と2013年の松山英樹(つるやオープン、ダイヤモンドカップ、フジサンケイクラシック、カシオワールド)の2人。
▽国内ツアー優勝回数 20―21年統合シーズンの今季5戦目で2勝。単純に残り24戦に当てはめると、9・6勝する計算となり年間計10勝。83年(年間46戦)の中嶋常幸、96年(同36戦)の尾崎将司の8勝を更新するツアー新記録となる。
▽賞金 今季獲得賞金も5戦で5589万5000円で、1試合平均は約1118万円。残り24戦も同じペースで稼ぐと単純計算すると、国内男女ツアー史上初の3億突破となる約3億2421万円に達する。
◆男子ゴルフの東京五輪への道 6月21日時点の世界ランクを基準に算定する五輪ポイント上位60人が出場権獲得。〈1〉15位以内は各国・地域で最大4人〈2〉16位以下は〈1〉の有資格者を含み最大2人が出られる。大会は7月29日から4日間、埼玉・霞ケ関CC東Cで72ホールストロークプレーの個人戦で争われる。16年リオ五輪で初出場した日本勢は池田勇太が21位、片山晋呉が54位だった。