◆男子プロゴルフツアー パナソニックオープン最終日(26日、京都・城陽CC=6967ヤード、パー72)
世界アマチュアランク1位の中島啓太(21)=日体大3年=が、1973年のツアー制施行後、2019年11月の金谷拓実以来となる史上5人目のアマチュア優勝を達成した。1打差の4位で出て、5バーディー、1ボギーの68。通算18アンダーで並んだ永野竜太郎(33)=フリー=とのプレーオフを1ホール目で制した。来年11月ごろまではプロ転向せず、今後は今年11月のアジアアマパシフィック選手権(UAE)での優勝を目指す。
ポーカーフェースな中島は50センチのウィニングパットを沈めても表情を変えない。同組だった日体大の1年先輩・河本力らのウォーターシャワーを浴び、やっと頬を緩めた。「(POは)心臓の音が聞こえるくらい緊張した」と直後のインタビューで涙を流した。金谷に続くアマVの快挙を「とても光栄。金谷さんにいい報告ができる」と喜んだ。
世界のアマタイトルへの“練習”だった。15番パー4。第1打でグリーン手前のピンまで28ヤードに運ぶと、60度ウェッジで2メートルに寄せてこの日5つ目のバーディーを奪った。フェアウェーが狭い難コース。07年にアマVの石川遼が「ビビった」と言うほどだが、世界アマランク1位の逸材は、今大会を通してパー3以外の全56ホールで、第1打でドライバーを振り続けた。
8月の全米アマで予選落ちし「優勝争いではドライバーを握らないといけない状況がある」と実感。ナショナルチーム(NT)のガース・ジョーンズ・コーチに提案した。この日のフェアウェーキープ率は35・71%に沈み、途中で「逃げたくなった」というが、メンタル強化策を最後まで貫いた。
15年の日本アマで金谷に敗れ2位になってから背中を追ってきた。NTの海外遠征では常に同部屋で「金谷さんのおかげで意識高くやってこられた」。全米アマで自信をなくした後、金谷に相談すると「自分と向き合うこと」と助言された。本来は「泣き虫」だが、今大会は教えを守り、感情を抑え「自分と向き合えた1週間」と快挙につなげた。
この勝利で23年までの国内シードを獲得。期間中にプロ転向すれば、ツアー参戦は可能だが「来年11月まではアマで」と明言。12月の日本シリーズJTカップ(報知新聞社主催)に石川、松山英樹に続く史上3人目の出場にも前向きだった。
8月に手にしたマーク・マコーマックメダル賞の資格で、来年のメジャー2大会の出場権を保持。次は優勝すれば来年のマスターズの切符を得られる、アジアアマパシフィック選手権に照準。タイガー・ウッズに憧れ、6歳でゴルフを始めた。将来は「世界で応援されるゴルフをしたい」。夢の実現へ鍛錬を重ねていく。(宮下 京香)