【古賀敬之のゴルフあれこれ】  ゴルフにまつわる〝面白話〟第6弾 カップの直径「108ミリ」は絶妙な大きさ


 R&Aの初代プロであるアラン・ロバートソンの弟子だったトム・モリス(シニア)は一時、プレストウィックGCに移っていたが、1865年に古巣のセントアンドリュースに呼び戻された。というのも、セントアンドリュースではコース改造に取り掛かっていたのだが、この改造には名手モリスのノウハウが必要だったからだ。そして、コース改造は順調に進んだ。しかし、グリーンに関しては以前のまま、これまで通りに芝の上に穴を掘っただけのものだった。そこでモリスは思った。「ここを何人ものプレーヤーが通り過ぎてゆくと、これまでもそうだったが、穴が崩れたり広がったりしてしまう…」と。以前から、モリスは穴が崩れず、一定の形をキープされる方法を考えていた。ある日、グリーンの近くに、たまたまゴルフ場の水道工事にやってきた職人が置きっぱなしにしてあった排水管に目が留まった。何の気なしに、これを適当な長さに切って穴にはめ込んでみたところ、これがバッチリの寸法だった。

 この時に使われた排水管の直径が108ミリ。排水管のサイズは一定だったことから、他のゴルフ場にも徐々に広がって行った。そして、ほとんどのゴルフ場がこの大きさを採用したことから、25年以上が経った1891年、ゴルフの総本山R&Aも正式に「ホール(カップ)の直径を4.25インチに統一」した。4.25インチ、つまり108㍉だ。以来、120年を経た現在までこの大きさを「変えよう」という意見は出ていない。大きくもなく、小さすぎもせず、大きさはそのまま。言い換えれば、直径43ミリのボールに対して約2.5倍の108ミリというサイズがプレーする上で絶妙な大きさだったともいえる。もし、あの時、モリスが排水管に目を止めていなかったら、違うサイズになっていたかもしれない。そうなった場合、ゴルフというスポーツはこれほど発展しただろうか…。

 現在のゴルフ規則では「穴の直径は4.25インチ(108ミリ)、深さは少なくとも4インチ(101.6ミリ)以上でなければならず、円筒をはめこむ場合は、少なくとも1インチ(25.4ミリ)以上はグリーン面よりも下に沈めなければならない」となっている。

 

 ◇古賀 敬之(こが・たかゆき)
1975年、報知新聞社入社。運動部、野球部、出版部などに所属。運動部ではゴルフとウィンタースポーツを中心に取材。マスターズをはじめ男女、シニアの8大メジャーを取材。冬は、日本がノルディック複合の金メダルを獲得したリレハンメル五輪を取材した。出版部では「報知高校野球」「報知グラフ」編集長などを歴任。北海道生まれ、中央大卒。

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