「グランドスラム(Grand Slam)」という言葉がある。ゴルフをはじめ、テニスや競馬など様々なスポーツ分野で使われる〝完全制覇〟を意味するものだが、実は、この「グランドスラム」という言葉を使ったのはゴルフが最初だ。
マスターズの創始者であるボビー・ジョーンズが、まだ、28歳のアマチュア・ゴルファーだった1930年のこと。このジョーンズは1年の間に「全米アマ」「全英アマ」「全米オープン」「全英オープン」という世界4大タイトルを制覇した。この時に「グランドスラム達成」として使われたのが始まり。以後、これに倣って多くのスポーツで使われるようになった。
「グランドスラム」の本来の意味は〝全てを制する〟こと。つまり、〝完全制覇〟なのだが、ゴルフ、テニスをはじめ、ラグビーやサッカーなど、試合や大会などが多岐に渡る場合は、そのうちの主要なもの、重要な大会の全てに勝った場合に使われるようになったようだ。
また、ジョーンズが「4大会」に勝ったことから、スポーツ界などで、野球の満塁本塁打(4点)などのように数字の「4」にまつわるものが多い。今では、ゴルフの主要な大会は、いわゆるメジャー大会と呼ばれる「マスターズ、全米オープン、全英オープン、全米プロ」と様変わりしたが、依然、タイトルの数は「4つ」。テニスも「全米、全仏、全豪、ウィンブルドン(全英)」の4大大会を全て制覇すればグランドスラムになる。さらに、最近ではこの言葉が各界に広がり、日本中央競馬は5タイトル、競輪は6タイトル、囲碁は7タイトルなどと広がっているが、必ずしも「4」にこだわる必要は無い。
なお、この言葉の使い方として間違ってはならないのは、これらのメジャータイトルを1年間のうちにすべて制覇することをいう。だから、何年もかかって「全部」のタイトルを手にした場合は「グランドスラム」ではなく、「キャリア(生涯)・グランドスラム」となる。
ちなみに、ジョーンズ以後、ゴルフ界にはまだ「グランドスラム」達成者は出ていない。「キャリアグランドスラム」は、ジーン・サラゼン、ベン・ホーガン、ゲーリー・プレーヤー、ジャック・ニクラウス、タイガー・ウッズの5人。女子ゴルフではアニカ・ソレンスタムら6人いる。
◇古賀 敬之(こが・たかゆき)
1975年、報知新聞社入社。運動部、野球部、出版部などに所属。運動部ではゴルフとウィンタースポーツを中心に取材。マスターズをはじめ男女、シニアの8大メジャーを取材。冬は、日本がノルディック複合の金メダルを獲得したリレハンメル五輪を取材した。出版部では「報知高校野球」「報知グラフ」編集長などを歴任。北海道生まれ、中央大卒。