
ツアー初優勝の佐藤は、水をかけられ手荒い祝福を受けた(カメラ・宮崎 亮太)
◆国内男子プロゴルフツアー フォーティネット・プレーヤーズ・カップ 最終日(2日、千葉・成田ヒルズCC=7137ヤード、パー71)
プロ10年目の32歳、佐藤大平(クリヤマHD)が7バーディー、3ボギーの67で回って通算20アンダーで逃げ切り、男子ツアー史上最多となる今季10人目の初優勝者となった。昨年末に生死をさまよった8歳の長男のために覚悟を決めて臨んだシーズンで悲願を果たし、新規大会の初代王者に戴冠。最終戦のメジャー、日本シリーズJTカップ(12月4~7日、東京よみうりCC=報知新聞社主催)の出場資格を初めて勝者として手にした。
10年かかってたどり着いた1勝は、佐藤が思い描いてきたものとは少し違っていた。「絶対に泣くよな、って思っていたけど涙が出なかった」。後輩たちからウォーターシャワーで祝福を受けた。ようやく祝福される側に立った。「優勝はいつできるんだろう。このままできないのかなと考えたりもした。幸せです」。心からの笑顔が浮かんだ。
緊張を自覚していなかったが、体は正直だった。前夜は午後11時に寝た。深夜2時に目が覚めた。目をつぶるも眠れぬまま決戦の朝を迎えた。1、2番を連続バーディーでスタートし「そこで少し落ち着けた」。17番パー3でピン左カラーから3メートルを沈めて突き放した。練習ラウンド中に「早くプレーしたい」という感情がわき出たほど好調だった。2日目終了時に、妻・みきさんにLINEした。「勝つから来なよ。絶対勝つから」。妻と3人の子供たちはこの日の朝、茨城・つくば市内の自宅から応援に駆けつけてくれた。
8歳の長男が昨年末、インフルエンザ脳症と診断された。集中治療室で10日を過ごし、退院まで1か月以上を要した。「自分の息子が50%の確率で亡くなると言われた。生きた心地がしなかった」と涙ながらに明かした。プロ10年目の今季は覚悟が違った。「絶対に勝ちたい。優勝を届けたい」。家族のために戦っていた。シューズに長男の名前を入れ、開幕を迎えていた。
優勝で最終戦のメジャー、日本シリーズJTカップの3年連続の出場を決めた。過去3度は賞金ランクによる資格だった。練習場で選手の後ろに置かれるパネルには、選手名と優勝大会が記載される。「あれがいいなって、ずっと思っていた。勝って行きたいというのがずっとあったのでうれしい。最終戦でも優勝争いをできるように頑張りたい」。32歳。黄金期は今からだ。(高木 恵)
◆佐藤 大平(さとう・たいへい) 1993年7月9日、兵庫・宝塚市生まれ。32歳。東北福祉大卒。8歳からゴルフを始める。中山五月台中3年の2008年に全国中学選手権優勝。茨城・水城高に進み10、11年に関東高校選手権連覇。15年12月にプロ転向。18年下部ツアー賞金王。昨季の賞金ランキングは18位。家族は妻・みきさん、長男(8)、長女(7)、次女(5)。愛犬は黒のポメラニアン、リリー(1)。174センチ、72キロ。

